MotoGP

ジェレミー・バージェス:最新独占インタビュー【後編】

ヴァレンティーノ・ロッシのたっての希望で、共にドゥカティに移籍した名エンジニア、ジェレミー・バージェス。
先日より2回シリーズで掲載しております、そのバージェス氏の最新独占インタビューの後編でございます。
前編がまだの方は、こちらからどうぞ!

モトGP 『ジェレミー・バージェス:独占インタビュー』

オーストラリア人エンジニアとロッシ・チームがドゥカティで




ボローニャにあるドゥカティ社では最近、どんな作業をされてましたか?
「ドゥカティと言うメーカー、技術スタッフら、マシンなどに接近していました。今は、上手い作業の進め方を見つけなければならない段階ですからね。」

イタリア人と一緒にいてみて、どんな風に感じられましたか?
「良いですよ。イタリア人と一緒に働いたり、付き合うのには慣れていますから。ヴァレンティーノを別にしても、私はイタリア人の皆さんと共に成長してきましたからね。だって、オートバイ史においてはイタリア人が常に主役だったでしょう。ライダー、製造メーカー、マネージャーやエンジニアなどね。」

ドゥカティのやり方に合わせて、仕事の仕方を変えなければならないと思ってますか?
それとも、むしろその反対だと?

「中間点を見つければ済むことでしょうね。私が出会った社員の皆さんは大変に感激していて、大きな決意のほども伺えました。彼らの方も仕事の進め方を多少変える気持ちでいるように見えるし。皆にとって、新たな経験でもあるしね。私達全員が、この冒険から何かかにか新しいことを学べるでしょうね。」

ロッシ選手を感激させないことにはね!
「ドゥカティは彼が必要としているものを提供すべく、懸命にやってゆこうとしてますね。実は、社内をウロウロして、このプロジェクトに参加している人達と話してみたんですが、7年前のヤマハに漂っていたような空気を少し感じましたね。」

状況は違うとは言え、リンクするところはあるわけですね。
「ええ、同じではありませんけどね。最終的にはドゥカティがヴァレンティーノに新たな挑戦を提示し、それは彼が探し求めていたものだったわけです。それから、私やスタッフチームにこの新しい冒険に参加してくれるかと聞いてきました。だから、大体においては7年前と同じですね。新しいマシンに新しいメーカー、そして新しい挑戦。ただ、今回はマシンのレベルがもっと上だし、私達もなかなか経験豊富になってますがね。」

デスモセディチ機は複雑なマシンとして有名ですよね。操縦だけでなく、組み立てや解体と言う点から見ても。
「もう色々と調べてみましたが、そう悲劇的なものでもないですよ。ちょっとばかり手がかかって、やり方が違うだけでね。慣れの問題ですね。」

ヴァレンシアの走行テストで初日最後に、メカニックの皆さんが幾分ショックを受けていたと言われてますが。日本のバイクに比べて作業量が多いことについて
「私は別にショックなど受けませんでしたけど。ドゥカティ機は違う…確かに複雑ですが、マシンに大切なのはライダーの能力を抑えつけないってことですから。」

デスモセディチ機には細かい部品がどっさりあると言う伝説がありますが、真実なのですか?
「真実に思えますが…実際、細かい部品がどっさりありますね。組立てに手間はかかるでしょうが、それはプロジェクトが不味かったからではなく、単にドゥカティがグランプリに関しては若造だからと言うことです。参戦してから年数が浅く、まだ、ボックス内での作業の単純化と言う段階に入っていません。ホンダやヤマハがすでに到達している段階ですよね。彼らは30〜40年も前から参戦しているんですからね。」

その点においてもドゥカティは成長していかねばならないと?
「マシンの『パッケージング』は改良できるでしょうね。その点には達せられるでしょう。7年前に私達がヤマハに移った時も、似たような問題がありましたよ。あの時はホンダから移籍したわけですからね…。」

(ホンダは)ある点において非常に進んでいると言うのは、本当ですか?
「そうそう、そうなんですよ。だけど、私達はヤマハでだって組立てに改良を加えましたからね。それで、局部的に手をかけなければならない事も増えてね。ヤマハでできたんだから、同じことをドゥカティでだってできるでしょ。」




ドゥカティではバージェスさん達に、最大限にマシンを活用すると言う点でも期待してますね。
「常に私の目標は、各ライダーが能力の限界に挑めるようなバイクを創ることでした。現在のヤマハはまさにそんな状態で、それもこれも全てはヴァレンティーノの功績です。彼はこれから同じことをしてゆくでしょうし、私達はまた、その手助けをしてゆくでしょう。」

ストーナー選手がホンダ・オフィシャルで走るのは脅威ですか?
「ヴァレンシアのテストでのライディングについては驚いていません。この選手の問題点はスピードではありませんから。実際、世界最速のライダーなんじゃないでしょうか。2010年のモトGPで観た通り、それなりのリザルトを出すには安定さも必要です。総合順位でケーシーはヴァレンティーノの上にはなれなかった。全レース参戦したにもかかわらずね。一方、ヴァレンティーノの方は4戦欠場し、それ以外の多くのレースでは肩の痛みに苦しんでいた。ストーナー選手と言うのは、茂木とオーストラリアでは素晴らしい走りを見せ、マレーシアでは1周目で転倒してしまうようなライダーなのです。あんな風に走る必要のない時にね。」

ストーナー選手はホンダに移って強化されると言うのが一般的な意見ですが。
「ホンダ・オフィシャルへの移籍は偶然ではありません。 ホンダは何年か前から優勝できずにいて、マシンにであれ組織にであれ大きな投資を続けています。1年後には新たな時代に突入するでしょう。その新たな時代の初っぱなから、ホンダが主役の座を得たいと思っているのは明らかでね。2011年について言えば、ホンダのマシンは本当に勝てるマシンのようですからね。」

ヤマハの方は弱体化したのですか?
「まぁ、皆が注目してるところですね。ヴァレンティーノを失い、私を失い、私のチームも失ったわけですから。2年前には電子系統の主要な専門エンジニアも失ってますしね。」

ヤマハは憂慮しなければならないと?
「とりあえず、そんなことはないでしょう。ロレンソ選手がいますからね。若くて、非常に強い選手だ。来年のマシンは非常に良いものですしね。その後ですよ。ロレンソ選手が『1000cc』をいかに改良してゆくか…ですね。私はね、スポーツと言うものは巡り巡るものだと思ってるんですよ。つまり、あるプロジェクトが誕生しトップにのし上がり、そして落ちてゆく。ヤマハは2004年から現在まで、非常に良い循環の中にいましたね。だから、そのレベルにどれだけ留まっていられるか…でしょうね。2011年のヤマハは非常に強くなると思いますよ。ただ、ホンダも強いでしょうけどね。そのうえ私の考えでは、ドゥカティも強くなりますよ…。」

2月にはロッシ選手は32才になりますね。血気盛んな若者を抑えるには、どんな武器を使わなければならないでしょう?
「頭脳ですね。重要なことですから。ヴァレンティーノは経験を利用できるし、何度も優勝を重ねた中で積み上げてきた知識がある。そして、もちろん彼流のセッティングもね。少なくとも後2年、いや、それ以上かな…バレンティーノはまだ何か新しいものを生み出してゆくでしょう。この新たな挑戦のおかげで、エネルギー満タンって感じになってますからね。」

ロッシ選手の決断に対し、バージェスさんが何か懸念していると言うことは、もちろんありませんよね?
「ヴァレンティーノは自分の、そして他の者達のコンディションを測る術を知っています。この挑戦を望んだのは彼なのですよ。こう言う風な決断をしたと言うことは、非常に長い時間をかけ、細心の注意を払い検討したからです。これまでのキャリアでずっとやってきたようにね。」

イタリア滞在中は、ロッシ選手と頻繁に会われていたのですか?
「ええ、けっこうね。夕食も一緒に取りましたよ。良く話もしたし、ジョークもね。普段通りですよ。」

ロッシ選手はどんな様子でしたか?
「ちょっと痛々しい感じでしたね。これまでのキャリアで最悪のケガですから。それに他の選手達のように休んでいられませんしね。ただ、精神状態はとても良さそうですよ。スピリットの方は無傷ですからね。だから、私が心配するようなことは何もありませんよ。」

[ 完 ]

(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Moto sprint 2011年01月05日






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