1993年度500ccチャンピオン、ケヴィン・シュワンツが『Diario AS』編集局を訪れ、2時間に渡って過去・現在について語ってくれた。
あのレイトブレーキについて、レースの今昔を比べて、そして自身のタイトルについて。
「ドニントン(英)戦で優勝できそうだったんだ。それが、ドゥーハンのせいで転倒してしまって。」
モトGP『レイニーとは互いに殺し合いたかった』
500cc時代の世界選手権で優勝して、偉大なライダーの仲間入りをするには、非常に優秀じゃなくてはダメだった。
これが、あのケヴィン・シュワンツの持論である。
伝説の背番号34、多くのレースにおいてライバルらが駆るマシンよりも劣るスズキにまたがり、無謀なレイトブレーキと無邪気な勝利パフォーマンスで観衆の心を鷲掴みにしたライダー。
シュワンツは観衆のチャンピオンであったし、その哲学ゆえに『見せるライダー』だった。
その哲学と言うのが、これ。
「マシンを走らせるってのは、服を着たままやるより、最高に面白い。」
「レースはオール・オア・ナッシングだ。」
昨年の暮れ、当紙『Diario AS』のコラムニストでもあったケヴィン・シュワンツ氏が編集局を訪れてくれた。
永久欠番となった伝説の34番ライダーを…そして、皮肉屋さんを迎えると言う栄誉。彼とはすぐに意気投合できるのだ。
また、こう言ってはなんだが、スペイン語がわからないわけだから、当紙の中でも一番お気に召しているのは『ASガール』のエルサ・パタキー嬢と言うわけで、写真(シュワンツが指差してる女性の写真)を見るなり
「Oh, oh!」と。
さて、話が本題に入るや、すぐにあの1991年ホッケンハイムでのレイニーとの一戦を話し始めるシュワンツ氏。
スズキのRGB機を跳ねさせながらのブレーキング・インポシブル。
「私の人生における、最良の追い越しだったね。」
「私が走った中で最も危険なサーキットと言えば、ザルツブルクリンクだな。でも、恐怖を覚えたことは一度もなかったよ。時折、競合いのせいでイカレタことをしてしまうけど、それは勝つことを強いられるからであってね。」
テキサス生まれ、46才になるシュワンツ氏は大多数と同じく、昔のレースの方がもっと面白かったと考えている。
「イギリスへ行くと未だに、スーパーバイク時代の私とレイニーのレースについて聞かれますよ。」と話すのは、1987年イギリスのブランズ・ハッチサーキットでの対決のこと(トランスアトランティック・チャレンジ)。
オートバイレース史上での名勝負の一つであり、現在もYou Tubeで見ることができる(下記)。
名勝負と言えば、1993年のも加えなければ。
「レイニーも私も、コーナーの度にスリップしてね。マシン同士がぶつかり合って、ラップ毎に抜きつ抜かれつを繰り返して。そう言うのは、今はないですよね。電子制御が導入されたせいで、上手いのも下手なのも、皆、同じにされてしまったね。現在のモトGPは、昔の500ccに比べたら遥かに楽ですよ。私達の時代は、いつ如何なる時も、とんでもないヘマをしかねなかったものです。」
ケヴィン・シュワンツが優勝できたのは、ウェイン・レイニーがミザノ戦で転倒してくれたお陰だ…なんて言われているが、その答えはこちら。
「ドニントン(英)戦で優勝を決められそうだったのに、ドゥーハンのせいで転倒してしまってね。それまでの総合ポイントはレイニーより上を行ってたんだから。
ウェインがポイントをもっと取っているとか、ラスト4戦でヘトヘトになっていたなら…。だけど、全て裏目に出てしまった。私は手首を負傷してウェインの方が優勢になって。
もしも、あの時、ドゥーハンのせいで私が転倒なんてしていなかったら、今頃、レイニーは車椅子生活なんかじゃなかったんだ。」
あの事故により、シュワンツ氏は心を痛め、そして、ライバル心が友情に変わったのだ。
「いや、事故の前から友人でしたよ。1986年にレースを始めた時は、大嫌いだったし、殺してやりたいぐらいだったけど。むこうも、私のことはそう思ってたでしょ。互いに嫌い合って、そして互いに高め合っていった。だって、最悪の敵に負かされるわけにはいかないものでしょ。」
ヴァレンティーノ・ロッシ選手が彼らと…ドゥーハンやガードナー、ローソン選手らと戦ったら、どうだったのか?
「以前、クリビーレやドゥーハン、ウェインと一緒の時に聞かれたことがあったけど…誰が勝つか分からないって答えましたね。
だけど、やっぱりヴァレンティーノが5位なら面白いでしょうね。イタリア人記者達がヴァレンティーノに駆け寄って、こう言うんですよ。彼ら相手に5位なんだから立派なものですよって。」
(日本語翻訳:La Chirico / 西語記事:Diario AS 2011年02月11日)
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ふ、服を着たままやるより楽しいって…
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