
『ガバッリーニ語り尽くす:ロレンソはああ見えて、驚くほど腰が低い…』
★クリスティアン・ガバッリーニはモトGP業界で20年以上働いており、ケーシー・ストーナーやホルヘ・ロレンソ、ジャック・ミラー等のチーフメカニックを務め、現在はフランチェスコ・バニャイアを担当している。
★8月末、ガバッリーニ氏が、アンドレア・ミーニョ(29才、元プロレーサー、現ロッシ陣営のモト3コーチ)のポッドキャスト『MIG babol』で次のように話した。
[ 第3章はこちら ]
【貴方はドゥカティに戻り、2017年からホルヘ・ロレンソを担当したが…】
「ロレンソと組んだ2年間は…とんでもないぐらい大変でへとへとだったけど、とんでもないぐらい素晴らしかったねぇ。
人間的な面がね…信じられないような話だけど…ロレンソと言えば、大概の人は『頭のネジが飛んでる』って思ってるだろ。ところが、実に言い青年なんだよ。
大衆ウケが悪かったのは、多分、思ってることに何のフィルターもかけず、そのまま言ってしまうからなんだろうね。
とにかく、いつでもどこでも正直で、大体いつも真っ当なことを言うんだ…ただ、的を射たことって言うのは不愉快なものだし、面白おかしくは聞こえないものでしょ。
あと、もう1つ…びっくりするぐらい腰が低いんだよ。
(ドゥカティに)加入してきた時、すぐに『君はリアブレーキをあまり使わないようだが、ドゥカティ機の場合、それだと速くは走れないよ』と伝えたんだ。そうしたら、『分かった。じゃあ、教えて欲しい』と言ってきてね。
冬期セパンテスト開始直前、トラックはまだ誰も走ってなかったから水で汚れてたんだけど…ロレンソは朝早くにライダースーツ姿でピットボックス入りし、こう言ったんだよ…『レインタイヤを装着して、ちょっと走ってみよう。ほら、リアブレーキを使いこなせてないって言ってただろ。教えて欲しいんだよ』。
結局、他に何の役にも立たないような路面コンディションの中、リアブレーキを習得するためにタイヤ2組使い切ったんだ。 まさに、速く走ることに執着してるって感じだったね。
もっと速く走れそうなアイデアが浮かぶと、何時だろうとおかまいなしに電話してきてたしね。まぁ、上手く調整できたら天下無双だったから…戦闘マシンって感じだったね。」
【でも、2017年はかなり厳しいシーズンになってしまってたけど…】
「ドゥカティ初年度は、マシンを乗りこなせず…大苦戦していたからね。ただ、ロレンソ本人はトレーニングを欠かさなかったんだから、責任は我々の方にあるだろうね。」
【2018年に調子は上がってきたものの、結局、ロレンソが離脱を決めてしまった…】
「ロレンソは2017年に例のエルゴノミクス適応作戦を開始し、最終的に燃料タンク後部に部品を1つ取り付けることで任務遂行となったんだよ…本人がずっと、『コーナリングの時に外側になる足を支えることができれば、もっとスムーズに走れる』と訴えてたんでね。
その部品が投入されたのが、2018年のムジェッロGP直前だったんだが…あれは、けっこうショッキングな出来事だったねぇ。その部品を使った途端、ロレンソがレースで優勝したんだから。
しかも、それはほんの始まりに過ぎなかったんだ…次にやったエンジン選択なんか、本当に型破りだったんだから。
うちね、従来よりパフォーマンスは優れているがパワーは劣っているエンジンを選んだんだよ。ドヴィツィオーゾは従来型を使っていて、直線コース終盤ではロレンソより時速数km速かったんだよねぇ。
当然、ジジ・ダッリーニャや他のエンジニア陣から、『君らは間違っている!』と言われてしまい…でも、ロレンソが言うんだよ…『僕を信じてくれる?こっち方がコーナー立ち上がりのハンドリングが良いんだから。あとは僕に任せてよ』って。
そして、(レースでは)第1ラップだけで他の選手を0.5秒も引き離し、その後は遥か前を独走し続けた。今でもドゥカティで使われている多くの物は、当時、ホルヘ・ロレンソの強い要望で作られた物なんだよ。」
[ 最終章に続く ]
(参照サイト:『Mowmag.com』)
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