ドヴィツィオーゾ『心臓の上に58と付けて走る』

モトGP『ドヴィ：ヴァレンシアではシッチを胸に』

今週末、ヴァレンシアで開催される今シーズン閉幕戦を前に、ホンダHRCのライダーらが苦渋の想いに包まれている。
友人でありライバルであったマルコ・シモンチェッリを亡くした喪失感、そして、再びレースに戻らねばならないと言う…普通に考えたなら不可能と思えることに挑まねばならないのだ。
今週末のグランプリは、シッチが…そして58番のRC212V機が出走しない初めてのレースとなる。しかし、彼の思い出は全ライダーの胸に、魂の中に宿ることとなるのだろう。

そのことをアンドレア・ドヴィツィオーゾが良く知っている。
ドヴィと言えばミニモト時代、いつの日か世界選手権で戦う日を夢見ながら、マルコとは戦いを繰り広げていたのだ。
「マルコを亡くし、とても悲しく思っています。今回のレースではライダースーツのちょうど心臓の辺りに58と入れる走るつもりです。これまでのライダー人生、僕はずっとマルコと一緒に走ってきました。僕にとっては『ライバル』だったんです。彼を亡くした今、ぽっかりと穴が開いてしまったようなんですが、そこを決断力で埋められたらと願ってます。」

ドヴィツィオーゾ選手にとってはホンダでの最後のレースであり、その後、11月8〜9日の走行テストではヤマハTECH3のマシンに乗ることとなる。そして、今回の標的はチームメイトでもあるダニ・ペドロサ選手で、総合3位の座を賭けて戦うのだ。
「レースに出るには最適な精神状態とは言えないですね。ヴァレンシアでは本当に好リザルトを取りたいし、何としてでも3位で終わりたいと思ってるんですが。
得意のコースではないんで、厳しいレースになるでしょう。ダニの方はここではいつも調子が良いしね。そのうえ、ヴァレンシアが僕にとってはホンダでの最後のレースになるんですから、良いレースをしてこの10年を締めくくらせたいですね。」

ダニ・ペドロサ選手もまた、ホームとなる今回のレースでは空を仰いで走るつもりだと言う。
「皆、ヴァレンシアは特別なレースになるでしょう。このレースウィークエンドでは、僕らの想いはマルコへ向けられます。ファンの皆さんがマルコへの敬意と称賛の念を表してくれることを願ってます。モトGPファミリー全体がするようにね。
ヴァレンシアのコースは大好きだし、スペイン人観客を前に走るのが楽しみでたまりません。去年は茂木でのケガがまだ完治しておらず、最高の走りができたとは言えませんから。だから今回は良いレースをして、完璧な状態でシーズンを終えたいと思ってます。」

既にチャンピオンとなり、総合順位を気にせずに済むケーシー・ストーナー選手は、マルコ・シモンチェッリ選手に捧げるべく見ごたえあるレースをしたいと言う。
「セパンでのあの悲惨な事故の後、また今週、レースに戻るのは厳しいんですが、でも、彼を追悼するにはこれが最良の方法ですよね。以前に比べ、随分と安全性は高まってきていますが、それでも僕らのやっているスポーツが危険なものであることは、皆、分かっています。ただ、残念ながらこの手の事故はいまだに起きます。マルコのご家族に想いを寄せています。この辛い時をなんとか乗り越えてくださるよう祈ってます。」

我々、記者らにとっては信じられないようなことなのだが、今回のヴァレンシアGPが今シーズン最後のレースとなる。
1年を通し懸命に働いてきた。そしてフィリップアイランド戦で総合優勝が決定してからは、2012年にも目を向けてきた。今回のレース後は2日間、1000ccマシンの走行テスト取材のためヴァレンシアに留まることとなる。その後、やっと少し休養を取り、この長いシーズンについて色々な角度から眺めることができるわけだ。
ファンの皆さんに見ごたえあるレースを贈るために、そして特に、マルコの思い出のために、コースに向かおうではないか。

（日本語翻訳：La Chirico / 伊語記事：Gpone 2011年11月01日）

幼い頃からの宿敵で、性格も正反対だった故、シッチとドヴィの間には嫌悪感のようなものさえ漂っていたと言いますが、
今回、ドヴィが「シッチが逝ってしまってから、丸2日間泣きっぱなしだったんだ。」と言っていたのだと。

マルコ・シモンチェッリ選手のご冥福を心よりお祈りいたします。