モトGP『スッポ:CRTは余儀なき選択』
CRT到来と言えば、モトGPでは一、二を争うほどに物議をかもしている話題だ。
市販エンジンを使ってのこのマシンについては、各メーカー同様にホンダが頻繁に疑念を呈している。
ホンダのマーケティングディレクターであるリヴィオ・スッポが、今、世界選手権に起きつつある変化について個人的な意見を披露してくれた。
ホンダとして…特にHRCとしてはCRTと言うコンセプトに対し、どのように反応してゆくものと思われますか?
「我々は現実を見据え、取り組んで行かなければならない…つまり、現在、グリッドに20機並べられる資金は得られないと言う現実をね。景気後退はヨーロッパでは更に厳しいものとなってます。簡単な状況ではない。モトGPと言うのはおもにヨーロッパが基盤なんですから。好む好まざるに関わらず、参戦台数を増やすための解決案を要していたんです。CRTと言うのは、そのための選択肢の1つです。今年はデビュー年なわけだから限界もあるでしょう。ただ、コンセプトにもあるように、上手く機能してゆけるんじゃないでしょうかね。ほぼスパーバイク仕様のマシンが、純正プロトタイプ機と競り合ってゆけるだろう…と。」
将来的にCRT機がモトGPクラスで競り合って行けるようになると思っているのですか?
「『競り合う』と言うのが何を意味するかによるでしょう。ここ最近の選手の中に良い例がありますよね…つまり、純正プロトタイプを駆りながらトップ陣とはかなりの差がついてしまったと言うような。常にそうであってきたわけで…なぜならこのスポーツでは、まだまだライダーによって大きな違いが生まれるますから。つまり、ケーシー・ストーナーやダニ・ペドロサ、ホルヘ・ロレンソ、それかヴァレンティーノ・ロッシがCRTに乗ってみるまでは、その真の競争力など分からないでしょ?勝てるマシンじゃなくても、優秀なライダーと優秀なチームならば報いは得られるのではないですか。そして実際のところ、チャンピオンタイトルを20選手で争うなんて不可能なことでね。常にそうであってきたわけで…ただ、以前はマシン1台走らせるための資金を簡単に得られたってだけ…たとえ最高レベルのものじゃなくてもね。今では、それもどんどん難しくなってしまって…トップクラスの選手のマシンじゃなくって、むしろ、その他の選手のがね。」
CRTの出現によりモトGPにおけるプラトタイプ時代が終焉を迎えるかもしれないと思ってますか?
「思いませんね。製造メーカーはテクノロジー開発のための究極ラボとしてモトGPを必要としているわけだし、モトGPでは確実性、信頼性を得るためにメーカーを必要としてますから。問題は、いかにして妥当な金額でプロトタイプ機を入手するか…もしくはグリッドを埋められるような何か別物を入手するかであってね。」
CRT導入によってホンダがモトGPから撤退するのではと多くが懸念してますが、スッポマネージャーは世間が思っている以上にホンダはCRTに好意的だと考えられてますよね。
「うちはこのコンセプトに全く反対していないですよ。もちろん、ホンダとしてはCRTに興味は抱いてません。レギュレーションによれば、このマシンは製造メーカー向きにはなっていない…つまり、うちが直接関わることはないわけですから。ただ、もっと参戦台数を増やさなけれならないことは、うちも100%理解してます。CRTと言うのはそのためのマシンであって、うちとしては何かと上手く行くのかどうか…結果を待っている状態です。エドワーズやド・プニエのようなライダーが、今シーズンから相応の競争力を有する可能性はあると思ってます。去年のトニ・エリアスよりは速いんじゃないですか。」
グレジーニチームのCRT機は、ホンダでは問題だったのでは?
「そうは思いませんが。ホンダのエンジンを搭載しているのだから、その件は問題にはならなかったわけでね。イメージと言う点から見れば奇妙だったでしょうね。グレジーニとの関係で言えば、ホンダは頻繁にワークスマシンを提供してきたわけだから、もしグレジーニがホンダのプロトタイプ機と他のメーカーのエンジンを積んだCRTで参戦したならねぇ。まぁ、現状では問題ありません。」
アプリリアCRT機に悩まされている者もいましたが、ホンダではどうのように考えられてますか?
「レギュレーションにより、CRT機と言うのはデラックスなスーパーバイクから出来ているわけでね。ベースに同じ市販エンジンを載せ…スーパーバイクよりも練り上げてゆくことは可能ですけどね。唯一の違いは、プロトタイプを自由に練り上げていけると言う点にあるのであって…ただ、モトGPと言うのは常にそうあってきたわけですからね。かつてジャコモ・アゴスティーニがMVアグスタの純正プロトタイプで走っていた頃、プライベート選手らはマンクス・ノートン単気筒なんかのマシンで走ってたんですよ。実際ずっとモトGPとはこう言うものだったわけで、私としては問題ないと見てますが。多分、アプリリアCRT機が速過ぎるのではと危惧している者もいるでしょうが、ライダーの重要性って点から見れば、差は誰が乗るかによるんじゃないですか。」
旧友であるクラウディオ・ドメニカーリ氏(ドゥカティのゼネラルディレクター)はCRT機について、また、ドゥカティやホンダがプロトタイプを配備すべくモトGP機に多大な投資をしたと言う事実について腹に一物あるように見受けられますが。そしてまたドメニカーリ氏としては、アプリリアがCRTレギュレーションのおかげで裏口からモトGP入りすると見ているのではないでしょうか。
「そうですね。ただ、優勝争いができるレベルではないでしょう。つまり、彼が心配する謂(いわ)れなどないわけでね。」
[ 後編に続く ]
(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事 Gpone 2012年02月10日)
スッポさん、禁煙の方は上手くいってるんでしょうかねぇ。
もうこうなったら、早く一人前に育ってね、CRT!!クリックPrego