モトGP『ブルノGPこぼれ話』
日本カオス
遠征強要の噂に、事態の後退。ドルナ社とFIMが今年10月2日に決定した茂木GP開催が、いよいよ大事となってきている。
ラグーナセーカ戦までは茂木遠征を反対する選手らの結束は固そうに見え、ドルナ社が現地の安全調査を依頼したイタリア企業『ARPA』の報告にも影響を受けていないようだったのだが。
同報告では茂木界隈に危険がないとされているが、関係者らの間には混乱が生じている。なぜなら調査は茂木サーキット内だけにとどまり、関係者らの多くが宿泊することとなる水戸市(福島から最寄り)などは対象外だったのだ。
また同調査よりも問題なのは、ホンダを筆頭に多くの日本メーカーが専属ライダーらに茂木GP参戦を熱心に『要請』していることであり、中には一種の脅しと取れるケースも出てきている。
とにかく、前例がないほどデリケートな事態となっており、特に当初はロレンソ選手と共に茂木行きを反対していたストーナー選手が次のように宗旨替えしたのは衝撃的だった。
「(反対)発言をしていた頃は特に感極まった状況にいたんです。現在は最大限の情報を入手してますし、オーストラリア政府からも危険はないと保証されてますから。行くかどうかは分かりませんが、前向きに考えたい思ってます。」
ストーナー選手のようなタイプが意向を変えるのは予想外であり、また8月12日(金)に行なわれたセーフティ委員会に参加しなかったと言うのも全くもって非難されるべきことだ。同委員会では選手らによって茂木遠征が話し合われたのだが、出席者は10名ほどだったと言う。
茂木GP開催はいよいよ現実化してきており、パドック内には恐怖がつのっている。もはや口にされるのはこの話ばかりで、メカニックやスタッフらはその後の被害に怯えているのだ。つまり全てが絶対安全と言うわけではなく、現地の肉や野菜が摂れないためドルナ社ではヨーロッパから食糧と水を持ち込むためのコンテナを手配しているぐらいなのだから。
まったく馬鹿げた話だ。もしも、現在、日本で起きていることが他のどこかの国で起きたなら、ロードレース世界選手権は確実に中止となっただろう。結局、単純にオートバイレースをするかどうかと言う問題だけではないのだ。
ロッシ『日本遠征にNO』
8月14日(日)の決勝レース後、ヴァレンティーノ・ロッシが茂木GP遠征に対する姿勢を表明した。非常に断固としたものである。
「僕はあまり前面に出ないようにしてたんです。なぜなら、遠征中止と言うのが正論であり、他の誰かによってそう言った決定が下されると願っていたからです。ところが結局、レースは開催されると言う。正直なところ僕は日本へ行くのが恐いです。いまだ原子力発電所の事故が収束していないのに、そこからそう遠くない所でレースをするなんて…良策とは思えません。オートバイレースにとっては不要な危険でしょう。僕のことも、僕に同行する人達のことも、チームのことも心配です。
これから家に戻って何日かよく考えて、どうするか決めようと思ってます。他の人間の動きについて僕は興味有りません。日本遠征自体には全く問題を感じてませんが、茂木はダメです。別の地方の、別のサーキットでなら…ね。」
ペドロサ用フロントフォーク2種
HRCのチームメイトらとは異なりダニ・ペドロサがいまだ2010年・2011年のフロントフォークの比較検討を続けている。8月12日(金)のフリープラクティス初日、2台のRCV機に新旧それぞれのフロントフォークを装備していたのだが、結局、13日(土)以降はHRCワークス選手ら同様、新バージョンのみにしていた。
違い発見
スイングアームに関してもダニ・ペドロサは、他の選手らと異なる選択をしている(写真上)。ムジェッロサーキットやドイツGP後のテストで新型を試した後、結局、旧型の方を使用している。少なくともパッと見たところ、どんな違いがあると言うのか?シモンチェッリ選手が使用しているスイングアーム(写真下:ストーナー・ドヴィツィオーゾも同型)と比較検討してみた。スイングアームのボルト穴部分を仔細に見てみると弱冠の違いがあることが分かる。
またまた違い発見
ドゥカティではGP11.1機(オランダGPよりヴァレンティーノ・ロッシが使用)の向上に向け日夜作業が続けられているが、パッと見たところでは違いは容易に分からない。しかし、小さいながらも一ヶ所見つけましたよ。
GP11.1機(写真上)は前輪のボルトがフロントフォークにナットで止められているのに対し、それ以前のマシンはカピロッシ選手のGP11機(写真下)を見て分かる通り(他のデスモセディチ機も全て同様)、内側にねじ切りしてあるのだ。
進化したら複雑に
8月12日(金)のフリープラクティス第2セッションで、アンドレア・ドヴィツィオーゾがエンジンブレーキをより進化させるべく長いことボックス内に留まっていた。ドイツGPよりHRCライダーらが使用し始めたものなのだが、ドヴィツィオーゾ選手は次のように説明している。
「より進んだ、『賢い』システムなんです。ブレーキングポイントでは以前のより有能ですね。マシンの安定感が増すからなんですが、ただセッティングは以前より複雑なんですよ。ザクセンリンクでもラグーナセーカでも使ってみたけど、今回は随分タイムが落ちてしまったんで、また以前のものを使ってみました。多分、新旧のシステムを合体させられるんじゃないかなぁ。どうなるでしょうね。」
アプリリア・エンジン
来年からモトGPクラスに新たに加わる『CRT(クレイミング・ルール・チーム)』と言えば市販1000ccエンジンが使用できるカテゴリーであり、まだ幕は明けていないながら、おいしい話…大迫力4気筒エンジンがアプリリアから出てくる可能性があるのだ。
アプリリア本社の倉庫には現在、WSBでは使用できない大パワー・エンジンが20基ほど埃をかぶって棚に並んでるいる。このエンジンにはチーム・グレジーニも『CRT』参戦するセコンドライダー用に関心を示している…と言うのもホンダRCV機があまりに高額すぎるからだ。ただ、HRCの中本修平副社長はあまり満足しておらず、
「グレジーニが『シモンチェッリ・セット』に対し全額きちんと支払うって言うなら問題ないが、HRCに援助を求めてくるようなら、私としては上になんて言い訳していいものやら。“いや〜、グレジーニではアプリリアへ支払う金は捻出できたようですよ”って?」
GP噂話
マルコ・メランドリが《2012年にヴァレンティーノ・ロッシはチーム・グレジーニよりホンダのCRTで参戦する》と公表していたが、それに対するロッシ選手の回答がなかなか面白かった。
「メランドリ選手が僕の新しいマネージャーだったとは…。実際のところ、2012年は100%ドゥカティで走りますよ。まぁ、メランドリ選手がOKしてくれればの話ですけどね!」
前から言ってたでしょ
私ことジョヴァンニ・ザマーニ談
「ロッシはドゥカティであんまりモディファイしないでも乗りこなせるようになりますよ。」
(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事 Moto.it 2011年08月16日)
|
茂木GP…いよいよ分からない展開になってきましたね。