オートバイ世界チャンピオン、ヴァレンティーノ・ロッシの好敵手と言えば、今でこそスペインの若造ライダー、ホルヘ・ロレンソ選手でありますが、数年前までは、このマックス・ビアッジ選手だったのは有名。
ロッシ選手が君臨する以前は、イタリアのオートバイ界最大のヒーローであり、ロッシ選手がヤマハに移籍した時の一騎打ちなんざ〜もう、文字通り手に汗にぎりました。
さて、2007年にはスーパーバイクに移ったビアッジ選手なんですが、今年は公私共に絶好調のようであります。
後半、事故後のロッシ選手とのエピソードなんぞも、さらりと語っております。
イタリア 『マックス・ビアッジ、女達とバイク、苦痛はなし』
ビアッジ選手のもう一つの顔。穏やかで静か、寛いでいる。
いつも通り生真面目ではあるが、意地の悪い、挑発的な感じは出ない。
以前ならば鋭い戦斧が現れるのも時間の問題だったが、今ではそれも地中深くに埋められたかのようだ。
人から挑発されても反応しなくなった。例えば、モンテカルロの町中をビアッジ選手が運転するスクーターの後ろに乗って走っていた時のことだ。信号待ちをしていると、通りがかりの人が興奮した面持ちでビアッジ選手に向かって叫んだ。
「ヴァレンティーノ!ヴァレンティーノ…!。」
かつてのビアッジ選手ならば、どなりつけ、告訴でもしかねなかったことだろう。それが今や、ただ笑っているだけ。
「からかってみたかったんでしょう。」
そう言って、落着いた様子でエンジンをふかす。
あの『海賊』と呼ばれた男が、今、最高に幸せな時を過ごしている。
幸せが一気に押し寄せてきたのだ。スーパーバイク世界選手権のリーダーとしてチャンピオンタイトルを目指しながら、去年の9月22日には元ミス・イタリアで7年前から一緒に暮らしているエレオノーラ・ペドロンさんからの贈り物…愛らしいイネスちゃんの父親となり、そして、今年の12月には第2子の出産も控えている。まるで雲の上にでも居るような心持ちだろう。
「チェコのブルノ戦から戻ってくることばかり考えてました。こんなに良い事ばかりが一遍に起きるなんて初めてですよ。今までの苦労や夢、希望がむくわれた瞬間でね。普通、こう言う幸せな時ってすぐに終わってしまうものだけど、長く続いて欲しいって思ってますよ。時間的なリミットがあるなんて考えないでね。」
3年前、このいわゆる『夫婦関係』について、2度目や3度目があるようなものではないと語っていた。レースと家庭、つまり重要で労力のいるこの2つの事を、両立するのはあまりに困難だと。
「家庭と、ジプシーみたいにあちこち飛び歩く仕事って言うのは、相反するものだって頑に思っていたんです。でも、彼女がそれとは反対の考え方で、それに納得してね。」
エレオノーラさんから随分と時間をかけて説得されたのですか?
「いや、何がなんでもそうしたいって言うような、執拗な感じではなかったですよ。それに、家庭を持つとか子供を作るってことは、昨日今日で簡単に決められることじゃないでしょ。それは素晴らしいことであり、残りの人生、ずっと大きな義務を担うってことでね。」
二人のなれそめは?
「2003年、ミラノのディスコで知り合いました。彼女が前年度のミス・イタリアだなんて知らなかったし、彼女も僕がライダーだってことは。後から、こう言われましたよ。“サッカー選手かと思ってた”って。僕がちょっと席を外した隙に、彼女が帰ってしまって。なんとか彼女の電話番号を手に入れてね。1ヶ月半、二人で話して、笑って、気違いみたいに面白がって。ずっと電話だけで、直接会ったりしないでね。品の良い口説き方でしたね。互いに良く知り合うことができましたよ。」
ビアッジ選手がマイホーム主義になったと?サーキットと家の往復だけで?
「家に居るのは、いつも好きでしたよ。穏やかな空気を大切にしてるし、常に静寂さを求めていますね。多分、いつも騒音の中に居るからかな。一緒にいますよ、彼女と娘のイネスとね。もう、可愛いですよ。たっぷり寝て、目を開けたらすぐにニコニコして。笑ってね。家に居るのが良いですね。僕の社会的な生活は向こう側にあるんで、彼女にとっても友達と行き来したりとか、散歩したりとかには不便なんですがね。」
第2子を作ろうと決めていた二人にとって、嬉しい結果となりましたね。
「年の差をあまり離したくなかったんですよ。その方が良いかと思って。子供達にとっても良いでしょ。同じ年頃で、一緒に成長してゆくってのはね?男か、女か?最初の子の時と同様、生まれるまでのお楽しみにしてますよ。大切なのは、すべて順調にゆくってことでね。」
家庭、それは幼少時に手放さねばならなかったもの。ビアッジ選手は、両親の離婚が一番の痛手だったと言う。母親とは絶縁状態になっていたのだが、しかし今は…。
「何年も会っていませんでした。自分が親になってみて、母と行き来した方が良いんじゃないかと思えてきてね。自分の方から歩み寄って。嬉しかったですね。ひとつ、丸く収まったわけでね。自分自身は父親となり、自分の母親は戻ってきてくれた。損得勘定なし。本当に心からそうしたんです。」
昨年、新たにアプリリアに移籍された際には、勝てないと分かっていながらスタートするのは初めてだと言ってましたね。それがシーズン半ばにして勝利を手に入れ、今や破竹の勢い。あの時期に比べ、なにか変わりましたか?
「個人的なことでは、家族ができて生きてゆく意味が生まれ、大人になりましたね。調子も良いし、落着いてますよ。仕事面では経験の1年でした。バイクは改善されてきたし、チームの方は良い調整期間を送ってきた。昨年の世界選手権の終盤では良くポイントを稼げたし。優勝はヤマハのスピーズ選手だったけどね。今季の序盤、うちのチームは自信がなかったけど、優勝を狙いにゆくと言う意識はありましたね。」
しかし今季はスピーズ選手はモトGPへと移籍、芳賀選手は不調と、ライバル少なく、脅威も少ないのでは?
「2年前まではドゥカティが大会を率い、常にスーパーバイク寄りにいて、他の会社が撤退した時もレースツアーを支えていたしね。2年前までは勝てるバイクだったんですよ。違う次元にいて優勢だったけど、今は僕らのチームもいて、一人勝ちはできない。そりゃ確かに、“ ビアッジはモトGPみたいなアプリリアのバイクに乗って勝ってる ” なんて聞くのは残念ですけどね。今年の自分は2009年のヤマハに乗ってたスピーズ選手並みに勝ち続けてるけど、でも、スピーズ選手は誰からもシートの下に爆弾を仕込んでるからなんて言われなかったよね…。」
ライバルについて言うなら、ヴァレンティーノ・ロッシ選手がヤマハのスーパーバイクに乗ってブルノ・サーキットでテスト走行をしたところ、非常に速かったそうですが。どう言うことでしょうか?
「あのバイクが速いってことは知ってたし、ヤマハでだってそれは知られてるでしょ。BMW並みにね、勝てるバイクだってことですよ。彼が乗ったら速いってことは、前から分かっていたことですから。」
ロッシ対ビアッジの対決は両選手にとっても懐かしいものであり、ロッシ選手もスーパーバイクGPに参加したがってましたが。二大カテゴリーから上位選手を集めて、世紀のレース開催なんてできないものでしょうか?
「支援するところがあるとは思えませんが。異例の混合スポーツイベントになるでしょうし。まぁ、ファンにとっては夢でしょうね。選手がこの手のイベントに対して興味を示すとは思いませんが。」
アプリリアやBMW、一部のドゥカティなどのスーパーバイクが、まるでモトGPのような高性能バイクになる一方、モトGPの方では市販バイクの1000ccエンジンにも門戸を開くことにしたようですが。
「規則的政治的な理由から、そうなったとは思いませんが。それにスーパーバイクはそれほど高性能じゃないですよ。5年前はモトGPにしかなかった電子制御装置(例えばトラクションコントロールシステム等)を取り入れはしたけど、現在は高性能の市販車も見直されてきましたよ。特別なものは何もありません。」
世界選手権制覇が、かなり具体的になってきましたね。13年振りの総合優勝と言うのは記録的なのでは?
「記録的?さぁ、あまり気にかけてないんで。確かに、この1年間の調整期間を経て、自分やアプリリアがチャンピオンになるって言うのは可能かも。スゴいことでしょうね。」
ところで、モトGPの方は誰が優勝するでしょうね?
「ロレンソ選手かな。そうなったら良いけど。僕のファンだって言うから。」
ロッシ選手はどうですか?復帰しましたよね?
「タイムは良かったですよね。つまり、事故に見舞われ、複雑骨折も完治してない状態で、合併症もなかったってことでしょ。経過が良いですよね。ひとりのライダーってことで、もう一つ言うなら…No.1ライダーの話ですよ。常に好タイムのね。早く回復するものですよ。一般人に較べて内面のエネルギーが強いから。早々に復帰してきたのには驚いてませんよ。すぐに速く走れるようになるって思ってましたから。すごい結果ですよね。」
事故の直後、ロッシ選手にメッセージを送ったそうですね。まったく返事が来なかったんですか?
「モトGP解説者のグイド・メーダ氏に送ったんですよ。ロッシ選手に届くようにね。そうした方が良いと思ったんで。メーダ氏がそれをマスコミに広めてね。それだけですよ。まぁ、ロッシ選手とは電話番号の交換をしたことがないもんでね。」
(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:SportWeek 2010年7月24日号 / 写真)
今回、初めて『La Gazzetta dello Sport』紙で刊行している週刊誌『Sport Week』の記事を訳してみたんですが、実はオリジナル記事が当誌サイト上に掲載されるまでに時間がかかるようなんですよ。
一応、リンクしておきましたが、原文の方を読みたい方は、しばらくお待ちくださいね。
いつか、ロッシ選手にも
こんな静かな幸せが訪れるんと良いですねぇ。
祈願クリックPrego
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ボンジョルノchiricoさん。ビアッジがいたお風呂は鈴鹿サーキットホテルの浴場なんです。昔レースしてた頃にGPのテストと練習走行が同じ日とかがあってトイレでカピロッシと連れしょんなんてのもありました(笑)ちなみにおっきかったです(→▽←)
ボンジョルノchiricoさん。ビアッジがいたお風呂は鈴鹿サーキットホテルの浴場なんです。昔レースしてた頃にGPのテストと練習走行が同じ日とかがあってトイレでカピロッシと連れしょんなんてのもありました(笑)ちなみにおっきかったです(→▽←)
ボンジョルノ、とらんさん。
お風呂やトイレにあの人達がいたら…びっくりするだろうなぁ。
しかも、色々と見えちゃった日にゃ…
まずい、妄想が…
ボンジョルノ、とらんさん。
お風呂やトイレにあの人達がいたら…びっくりするだろうなぁ。
しかも、色々と見えちゃった日にゃ…
まずい、妄想が…
Ciao!キリコさん、再び迷走です。こちらの記事にもリンクはらせていただきました。なんとなく、ビアッジ選手はロッシ選手を光と例えると、影になってしまっているかのようなイメージが自分の中にはあったので、今回のエントリーを読んでなんだかホッとしました。良かったぁ、と。素敵な記事をありがとうございます。お願いなのですがキリコさんのブログをリンクさせてください。よろしくお願いします。
Ciao!キリコさん、再び迷走です。こちらの記事にもリンクはらせていただきました。なんとなく、ビアッジ選手はロッシ選手を光と例えると、影になってしまっているかのようなイメージが自分の中にはあったので、今回のエントリーを読んでなんだかホッとしました。良かったぁ、と。素敵な記事をありがとうございます。お願いなのですがキリコさんのブログをリンクさせてください。よろしくお願いします。
Ciao!Meisouさん!!
リンクの件も記事の件も、重ね重ねありがとうございます〜。
ずっとヒールのイメージがあった選手だから、余計に良い記事ですよねぇ、あれ。
実は、図書館で見つけて読んで、あんまり良かったんでコピーして持って帰ってきたぐらいでして。
そして実は、去年末ぐらいのバックナンバーにジェレミー・バージェス氏のインタビュー記事も見つけたんで、そのうちコピーしに行こうかと。
Ciao!Meisouさん!!
リンクの件も記事の件も、重ね重ねありがとうございます〜。
ずっとヒールのイメージがあった選手だから、余計に良い記事ですよねぇ、あれ。
実は、図書館で見つけて読んで、あんまり良かったんでコピーして持って帰ってきたぐらいでして。
そして実は、去年末ぐらいのバックナンバーにジェレミー・バージェス氏のインタビュー記事も見つけたんで、そのうちコピーしに行こうかと。