MotoGP

シッチ・ペドロサ接触事件:伝説のライダー達のコメントおよび総合分析

モトGP『シッチ・ペドロサ接触事件:5つの分析』




ル・マンGPで起きたマルコ・シモンチェッリとダニ・ペドロサの接触事故。
第18ラップでペドロサ選手に接触・転倒させたシモンチェッリ選手は、その結果、ライドスルーのペナルティーを受け、ペドロサ選手の方は右鎖骨骨折で先週水曜日にバルセロナで手術を受けたのだった。
あの事故から10日の間、様々な議論、論争、権威筋からの意見、証言、判断、写真や映像による検証などが飛び交っている。筆者は当サイトに掲載された各種コメントにも目を通し、シモンチェッリ選手が所属するチームのファウスト・グレジーニマネージャーとも再度話してみた。グレジーニマネージャーによれば、接触事故が起きた際のブレーキングは、その前のラップに比べて、決して長いものではなかったと言う。
また、スペインの週刊誌『Motociclismo』に掲載された、ケニー・ロバーツ、ウェイン・レイニー、ケヴィン・シュワンツ、ケニー・ロバーツ・ジュニア、ワイン・ガードナーらの見解も読んでみた。

ケニー・ロバーツ(500ccクラス総合優勝3回)のコメント
「私達が現役だった頃は、誰かがああ言う走りをしたなら、皆で話し合って、そう言うことをさせないようにしたもんですよ。でも、最近は選手同士であまり話し合ったりしないみたいだしね。」

つまり、ケニー御大のコメントを解釈するならば、シモンチェッリ選手がミスをした…と言うところか。

ウェイン・レイニー(ヤマハで500ccクラス1990〜93年総合優勝)のコメントは明快だ。
「シモンチェッリ選手はペドロサ選手に選択肢を与えなかった。マルコの方が速かったのだから、もうちょっと別なやり方でオーバーテイクできただろうに。」

ワイン・ガードナー(ホンダで500ccクラス1987年総合優勝)のコメントにも疑問の余地はなし。
「シモンチェッリ選手はアグレッシブ過ぎたように思うけどね。レースってのはこう言うもんだって言えばそうなんだけど、ただ、だからこそ自分のことだけじゃなく他人のことも考えなきゃ。マルコがもっとダニにスペースを取ってやって追い越してたんなら、OKだったんだけどね。」

ケヴィン・シュワンツ(スズキで500ccクラス1993年総合優勝)はと言えば、シモンチェッリ擁護派か。
「厳しいオーバーテイクだったけど、レースって言うのはそう言うもんだからね。多分、マルコはストーナー選手がどんどん引き離してるって思って、2位に甘んじたくなかったんじゃないかな。」

ケニー・ロバート・ジュニア(スズキで500ccクラス2000年総合優勝)のコメントが興味深い。
「もしもペドロサ選手がダートトラックレースのライダーだったなら、マシンを立て直す必要なんてないって分かってたんだろうけどね。」

総合分析
伝説のアメリカ人ライダーらのコメントを総合し、筆者なりの分析結果を出してみた。

1)シモンチェッリ選手のミス
事故直後にそう思ったのだが、その後、詳細を検討した結果も考えは変わらない。
私はシモンチェッリ選手はオーバーテイクを誤ったと思う。理由は、ペドロサ選手にスペースを空けてやらなかったからだ。
グレジーニチームマネージャーは「前の周回(第17ラップ)と同じタイミングでブレーキをかけている」と言っているが、第17ラップでは独走しており、18ラップではペドロサ選手がインコースを走っているのだ。
しかし、気をつけてもらいたい。だからと言って、シモンチェッリ選手が乱暴なライダーだと言うことではない。ただ、ああ言う状態でああ言う操縦をすると言うことは、私としては限度を超えていると思う。

2)ペドロサ選手に非はなし
今回の件では、ペドロサ選手への批判も多く、「シモンチェッリ選手の方が速かったのだから、ペドロサ選手はあんな風に頑張らないで、抜かしてやるべきだった。シモンチェッリ選手がオーバーテイクのタイミングを間違えたと言うのなら、ペドロサ選手も戦略上賢いとは言えなかった。」と言われている。
根本的な相違点はあるが、一部は的を得ているだろう。しかし、ペドロサ選手には何がなんでも頑張る権利があるわけで、そうやって頑張りながら相手選手には何の被害も与えていないわけだ。

3)厳しすぎたペナルティー
シモンチェッリ選手が無理をして追い越したとは思うが、あのペナルティーは厳しすぎる。なぜなら、シモンチェッリ選手のオーバーテイクはレース中の操縦として不当ではなく『普通』だったからだ。
また、筆者がもっと腹を立てているのは、レース運営委員会がペナルティーを出したのは、レース前日の一件に影響されたからだ。つまり、ペドロサ選手の転倒が他のライダーによってなされたものならば、ペナルティーなど科せられなかっただろう…と言うことだ。
ここで気をつけてもらいたいのは、今後、このペナルティーが危険な前例になりかねないと言うことである。

4)ペドロサ選手への攻撃
各種コメントが出ていた中で、ペドロサ選手に対し(私の見解としては)常軌を逸したものもあった。
スキャンダラスと言ってもいいのが、カルロ・ペルナット氏(彼とはかなり長々と論議したのだが)のコメントだ。カピロッシ選手のマネージャーであり、シモンチェッリ選手のコンサルタントも務めるペルナット氏が、こう言ったのだ。
「ペドロサ選手はモトGPクラス向きじゃないね。羽みたいに軽いのに重量級と戦うんだから。だから、転倒する度にケガしてるじゃない。」
『羽みたいに軽い』体型にもかかわらず、モトGPマシンを乗りこなすペドロサ選手の能力の高さは感嘆すべきものだと私は言いたい。
確かに、転倒する度にケガを負っているのは事実だが、ここ2回については本人のせいで負ったケガではないと言うことも忘れないで欲しい。茂木GPではマシンが原因であり、ル・マンGPではシモンチェッリ選手の接触が原因なのだから。

5)結論としては?
HRCの中本修平副社長は常にシモンチェッリ選手びいきで、2009年末にはもう直接契約を結びたかったほどに大ファンなのだが、今回のル・マンGPでの一件後は非常に立腹している。今回のことはシモンチェッリ選手の今後のキャリアに影響するのだろうか?
グレジーニマネージャーは断固として「そんなことはない」と言っているが。


(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事 Moto.it 2011年05月25日



同じように転倒しても
やっぱり小柄だと、筋肉も少なくって
他の選手よりも脆くなったりするんでしょうかねぇ…


ペドロサ選手、『羽のように軽やかに』復活クリックPrego
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POSTED COMMENT

  1. navale より:

    ロバーツJr.のコメントが私が映像を見る限りしっくりいくコメントです。

    因みに私は完全なる素人ですが。

    よくあのような場面で、インで抜かれるライダーは車体を起こしますよね。
    あれって何で何でしょうか?
    今回(もうだいぶ前ですが)の場合はS字ですから分からなくもないですが、
    結構意表を付かれたかのように起こすのを観ていると毎回ヒヤヒヤします。

    怪我をさ・せ・ら・れ・たダニは不運としか言いようがないですが、
    確かに怪我しやすい体幹バランスなんじゃないですか?
    可愛そうですが、
    怪我に悩まされるアスリートはどの競技でも多いですよね。

    ずいぶん古いレースですが、確かドゥーハンが脚を骨折した92年のアッセン。
    ガードナーも予選で同じコーナーで転倒。
    レースではシュワンツとローソンが正に同じようなオーバーテイクの際に、
    フロントとリアがぶつかって転倒。
    相当激しかったですが、二人とも一応は大丈夫だったような。
    グラベルなんかもタイヤバリアーの前に溝みたいになっていて、
    観ているだけで不安なシチュエーションでした。

    確かにテクノロジーが急激に発展して、バイクも極限の性能を発揮している現代のmotogpですが、
    なんか選手の精神力はひ弱になっているような気がします。
    勝手な感覚ですが。

    因みに、ご存知かと思いますが、ガードナーはオーストラリアンですよ!

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