モトGP『グローブを探せ!』
[記事下に『転倒後のホルヘ・ロレンソ選手の傷口を見て、呆然と口を開けたままのメディカル・マーシャル(ロイター提供写真)』を掲載してますので、苦手な方はご注意ください。]
フロントが高く持ち上がり、ホルヘ・ロレンソは地面へと放り出された。そして、アスファルトの上に投げ出された左手…薬指に向かってクラッチレバーがくさびのように打ち込まれる。
身を起こし立ち上がると、マーシャルらによりクリニックへと連れて行かれた。グローブが片方、見当たらない。ヤマハのボックスからはクリニックへと、次々に競争して駆けつけて行く。皆、しぶい表情を浮かべている。中にはロレンソ選手がいるのだ。
事故が発生した当初、どこかまとまりない様相で事は進んで行った。
ロレンソ選手が信頼を置くメカニックの1人、フアン・ジャンサーが両手で頭を抱えながら出てくると、動揺で顔を引きつらせたまま、他のスタッフらにケガの具合を身振り激しく説明し出した。指が2本切断したかもしれないと言い切ってみせる。しかし、その時点ではまだ医師の診断は下されていなかった。
そして、チーフメカニックのラモン・フォルカーダが、ロレンソ選手に会いにやって来て、しばらくして、「(ロレンソ選手は)叫び声を上げていた…。」と説明してくれる。ラモンチーフは立っていられず椅子に腰を下ろした。真っ青な顔がまずい状況であることを示している。そして、HRCチームのリヴィオ・スッポマネージャーとコーリン・ストーナー、そしてケーシーがクリニックへと到着。
「ホルヘに会って、どんな様子か知りたかったんです。仲が良いもんですから。大丈夫なんだって安心したくって。」と話すケーシー。
突然、助けを求める声が英語で響いた。
「グローブはどこだ?グローブを探してくれ!」
何人かのメカニックには、そんな風に聞こえた。そして数分後、片方のグローブを持った1人のマーシャルが、バイクに乗って現れる。チームスタッフに手渡されたそれは、医師らのもとへと大急ぎで運ばれる。
「中に指先が入ってるはずだ。」
別の方向から、また声が響いた。
そして今度は、このまま指先が失われてしまうのでは…と言う恐怖が広まっていった。
「欠場です。」
やっとドルナのメンバーから情報が出されると、次のように言葉が続けられた。
「アンフィット(不適合)とのことです。」
指の話か?
物陰に隠れ、耳をそばだてていた記者全員が自問した。
10分間の沈黙を経て、もう少し良いニュースが耳に入ってくる。ヤマハの広報チーフであるウィリアム・ファヴェーロ氏が次のように公表したのだ。
「指先は切断されていない。非常に重度の剥離状態と、爪と肉の一部が分離してはいるが、グローブの中には何もはいってなかった。それほど重傷ではないようだ。接合手術はここで可能か、それともメルボルンへ搬送することになるか分からないそうだ。」
逃避
30分後、プレハブ造りの小さなクリニックの裏口から、ロレンソ選手がスタッフに付き添われて姿を現した。局部麻酔により随分と落着いた様子で、自動車へと乗り込んでゆく。メルボルンの病院で手術を受けるためヘリポートに向かうのだ。
フォルカーダチーフメカニックが、
「マレーシア戦も走れるんじゃないかな。」と言うのが聞こえた。
その後、悲惨な状態となった指先の再形成手術が病院で行なわれた。しかし、3時間以上に及ぶ手術の結果、医師団とロレンソ選手は危険を避ける道を選択。
明日、ロレンソ選手はバルセロナへと帰国する。目前に迫ったヴァレンシアGP…今シーズン最後となるグランプリに関してまで、ヤマハは迷っている。
(日本語翻訳:La Chirico / 西語記事:Marca 2011年10月17日)
|
モバイルクリニックの外科医は「ケガ的には出場できる程度」なんて言ってましたが
この記事を読むと、かなり大騒ぎになっていた雰囲気ですね…
前の記事で別角度の写真がありましたが
「指の先が無い!」とハッキリ思いました。
今回の写真でも、先が無いように見えるのですが・・・
公式に発表されている事を信用するしかないですね。
ストーナーに対抗できる選手として応援していたので
こういう形での脱落は残念です。