モトGP『ロッシ、ドゥカティとホンダの間で揺れる男』
今年のオートバイ世界選手権は、まだ折り返し地点にも辿り着いていないのに、もはや全員が来年の方に目を向けている。そもそもの『原因』は、皆が意表を突かれたケーシー・ストーナー引退宣言。その結果、先のル・マンGPより引っ張りだこのホルヘ・ロレンソを中心に据えたライダー市場が公開されることとなった。
手札で勝負に出たロレンソ選手は、ヤマハ首脳陣との交渉を始めつつ、自身のマネージャーをホンダに送りこみ…決断にはさほど時間もかけずにゲームを終わらせ、結局、ヤマハ残留を発表した。今後はすっきりした思いでレースに…そして、M1機を駆ってのNo.1奪回に集中しようと言うわけだ。そして、その他のメーカー陣は手段を講じねばならなくなった…今や最も貴重な駒の行方が決まってしまったのだから。
ロッシ、イタリア-日本間で揺れる
ロレンソ選手が抜けた今、スポットライトが集中するのはヴァレンティーノ・ロッシだ。ヤマハ復帰の可能性は…完全とまではいかないが閉じられたも同然で、まぁ、少々複雑な話ではあり、ロッシ選手にとってもこれは最悪の報せだろう。ホンダ復帰の選択肢はここまで明確ではないながら、HRCの中本修平副社長の方ではロッシ選手のホンダ復帰の可能性は有りと繰り返しながらも、ワークス復帰は厳しく、プライベートならばと強調している。おそらく中本氏としてはロレンソ獲得を希望していたのだろうが、これも今後は色々と変わっていくだろう。しかし、ロッシ選手が2013年を想って東の空を見ていた際、視界に入っていたのはホンダではなくヤマハであり、なおかつ、『プライベート・チーム』など受入れ難いことでもあるだろう。
くわえて、ドゥカティとて彼を手放すわけにはいかない。つまり、各メーカー、トップチームにはトップライダーが必要であり、唯一、市場に出されているのがロッシ選手なのだ。ここで彼を失ったら、勝利の可能性はまたたくまに薄れてしまう。そして、ロッシ選手がドゥカティに残るかどうかの鍵は経済的な要因だけにはよらないのだ。今後のキャリアはそう長くはないだろう…せいぜい、後2〜3年と言うところ…そして、おそらく有終の美を飾りたいはずなのだ。デスモセディチ機をまた勝てるマシンに変身させ、それで勝つと言うのが、ケーキを飾る苺…つまり、最後の仕上げとしては古典的だろう。
「僕もここ何年間かで随分と稼いできたから、交渉に関してはマージンがありますよ。」と、バルセロナでは笑顔で言ったロッシ選手だが、別にふざけていたわけではないのだろう。現段階において、最も興味を抱いているのは経済面よりも技術的な保証…安定して表彰台を争える実力なのだ。
おそらく運命の日は7月29日…ラグーナセーカ戦で、プレツィオージエンジニアが見込んでいるような重要な進化を遂げられるかどうかにかかっている。ロッシ選手はそこまで待って、それから腰を上げることになるだろう。
ホンダにスペイン人ライダー2名
チャンピオンライダーを失ってしまったホンダとしては慌てねばならないところで、現在、代役探しに向けて手近な所に目を向けている。第一希望はどうやらダニ・ペドロサのよう…才能あるライダーだがモトGPクラスではいまだタイトルを獲得していない。ペドロサ選手としてはHRC残留は望むところであり、そう易々とドゥカティ・ワールドに乗り出したりはしないだろう。
同選手の傍らを埋めるのは、おそらくマルク・マルケス。モトGP昇格が予定されており、スポンサー・レプソルの強者だ。レギュレーションからすれば不可能だが(ルーキー選手はワークス・チームには入れない)、ホンダは同規制の変更に向け、再三、圧力をかけてきている。これが上手くいけば、スペイン人ライダー2名から成るチームとなり、スポンサーには歓迎されるだろうが日本側としてはそうでもない。
そして、先の『ルーキー・ルール』が撤廃されない場合、解決策はさらに複雑化することだろう。選択肢の1つとしては、ブラドル選手の昇格か。ビッグライダーらに混じり成熟した走りでモトGP初年度に立ち向かってはいるが、ただ、私個人としては1年でどこまで成長できるか予見しがたい。もしくは、バウティスタと言う可能性もある…しかし、こちらもやはりスペイン人で、問題は同じこと。
結局、ペドロサ選手は外されなかったわけで、チームを総入替えさせないために、現在、最も重要な駒となったのだ。そして、ペドロサ&ロッシチームなんて可能性もあったりする。まぁ、スペインのマスコミはマルケス&ロッシを望んでいるようで…すべてのカードを満足させる組合せではあるが、ロッシ選手はそうでもないだろう。
ヤマハのセコンドライダー
もう1つ空き席がある…ロレンソ選手のかたわらだ。スピース選手が期待を裏切りつつある今、契約更改はそう確実なものではなく、特に、背後にクラッチロー&ドヴィツィオーゾ選手が控えているのだ。
ドヴィツィオーゾ選手は来年に向けワークス希望であることを明言しており、第一希望はM1機…ただ、他の選択肢も除外してはいない。もしもロッシ選手がドゥカティを辞めた場合、ドヴィにとっては1つの選択肢となるだろう。若く、大志を抱き、テストドライバーとしての才も高く評価されている。たとえロッシ残留となっても、かたわらに身を置くのは間違いとは言えないだろう…ただし、ドゥカティではニッキー・ヘイデンに対し、まさにチームの一員として大満足しているのだが。
『2013年モトGPパズル』はたった1ピースはまったに過ぎない…その他はまだばらばらにテーブルの上に置かれているのだ。
(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Gpone 2012年06月12日)
早く収まるところに収まってもらって、レースに集中したいもんですね…
ヤマハ&ロレンソに、祝賀クリックPrego