モトGP『2012カタールGPこぼれ話』
エドワーズ:モトGP10年目に突入
コーリン・エドワーズ(38才、WSB総合優勝2回)が今年、モトGPクラスでの10年目に突入した。
これまで153参戦、最高リザルトは2位(5回獲得)、表彰台12回、PP獲得3回。最後に表彰台に上がったのは2011年イギリス戦。なお、今年はCRT機で参戦している。
ドヴィツィオーゾの『アントニエッタ』と『ロリータ』
アンドレア・ドヴィツィオーゾと言えば毎回、ボックス内では2台のマシンのことを愛称で呼んでおり、今年、ヤマハM1機には『アントニエッタ』『ロリータ』と名付けている。
モト3マシンは…自転車の音
昨年の125ccクラスに取って代わり、今回のカタール開幕戦でモト3クラスがデビューしたことにより2ストロークエンジンが完全にお蔵入りとなった。どんな音がするのかボックス内でも興味を引いていたが、まぁ、本音としてはがっかりと言うところか。草刈り機と比較していた者もいたが、自転車の音に似ている…と言う意見に説得力があった。ほら、昔、子供がスポークに紙をはさんでブンブン言わせてたあれである。とにかく、カッコ悪いのだ。
アルベルト・プーチの松葉杖
ダニ・ペドロサを発掘し、現在はそのマネージャーを務めるアルベルト・プーチが、カタールに松葉杖姿で登場した。理由はプーチ本人が自嘲的に説明している。
「ダニと一緒にモトクロスをしていて、右足をひどく骨折してしまった。後ろをついて行こうとしたら転んでしまって…子供みたいにね。45才だったってのが残念なところだよ…。」
ピッロ、電系システムなし
グレジーニチームのCRT機と言えば、FTRシャーシにCBRエンジン(テン・ケイトチームが開発)で、正真正銘たいして走り込んでおらず(ピッロ選手が“まだ練習中なんですよね”と冗談を飛ばしていた)、開発も途上で、当然のことながら電子制御システム(F1エンジンで有名な、あの英国コスワース社が担当)も然り。
電子制御システムがどれほど未開発だったかと言えば、第1回フリー走行ではほんの数周走っただけでピッロ選手がボックスへと戻り、外してみたら、すぐに2秒速くなったほど。まぁ、やらねばならないことが山ほどあると言うことだ。
クラッチローの秘密
カタール戦ではカル・クラッチローがスピードと安定したパフォーマンスを披露し、メインキャストの1人となった。2011年を思うと、えらい違いである。本人によれば理由は次のとおり。
「いやぁ〜、ともあれ、経験は増えたわけで…モトGPも2年目で、コースも全部わかったしね。でも、特にこれって言うなら、けっこうな時間が経ってから同じクラスに同じチームで、2年目に向けて走ってるからかな。それだよ…特に違いが出たのはそのせいだと思うよ。」
CRTにはタイヤ固すぎ
ケーシー・ストーナーによれば、ブリヂストンがカタールで用意したタイヤは柔らかすぎたらしい…一番固いやつでさえだ。しかしながら、モトGP機と同じタイヤを使っているCRT選手らにとっては固すぎたと言うのだ…一番やわらかいやつでさえ。冬期間中、カルメロ・エスペレータ氏がCRTには別タイヤを想定していたようだが、残念ながらそうはいかなかったわけだ。
ART機:WSB機より30馬力減
ART機(CRT風アプリリアWSB機)は、マックス・ビアッジが駆るマシンより約30馬力少ない。エンジン割り当てにより馬力を減少させているのだ。つまり、シーズンを通して1選手は12基しか使えないため、信頼度をおもんばかればこうせざるを得なかったのだ。WSBではこんな心配はない…エンジンは青天井で使えるのだから。
フェナーティ優秀…そしてラッキー
ロマーノ・フェナーティの見事な走りと、光る個性が皆を席巻した。今後の予想を立てるにはあまりに早すぎるが、かなり強力なことは確かだろう。そして、歴代チャンピオン同様、運にも恵まれている。本来ならばチーム・イタリアは競争力のそう高くないイオダ機でもって参戦するはずだったのだが、直前になって(契約も済んでいたと言うのに)FTRホンダ機に代えたのだ。やれやれ良かった…。
1000ccは800ccより遅い
理屈の上では恵まれていたはずのカタール・サーキットで物議をかもしているのが、予選も決勝レースでも1000ccが800ccより遅かったと言う件。なぜなのか?
ケーシー・ストーナーによれば、
「一連の理由からですね。コースは最良の状態じゃなかったし、そのうえ僕らもマシンのセッティングがまだ100%じゃなかった。」なのだが、ヴァレンティーノ・ロッシは、
「理由は2つ。2011年の開幕戦では、カタールで2日間のテストを行なったから。おかげでコースはキレイになったし、マシンのセッティングもできた。もう1つの理由は、ブリヂストンの新タイヤが、パフォーマンスのレベルで以前のより劣るからかなぁ…ただ、安全面って意味では明らかに上ですけどね。」と。
また、ホルヘ・ロレンソはこんなジョークを飛ばしていた。
「僕らみんな、1才年を取ったわけだから、遅くなったんじゃないの…。」
燃料制限21リットルと言うのレギュレーションが現存していることも忘れてはならない。それ故、新1000cc機もそう強い走りはできないのだろうから。
…恐怖のパフォーマンス
ラップタイムはともかく直線コースでは1000cc機は非常に速い。速すぎると言う者さえいる…例えば、ホルヘ・ロレンソやジェレミー・バージェス(V.ロッシのチーフメカニック)で、インタビューで何回かそのパフォーマンスの危険さを強調している。一方、ヴァレンティーノ・ロッシの意見は次のとおり。
「直線は時速327kmだろうが時速340kmだろうが、そう変わりませんよ。マシンに乗っていれば、それほどはっきりは感じないけど。確かに、台数が多ければ危険にはなりますけどね。これより速くしないってことが重要なんじゃないかなぁ。」
なお、ホンダのテクニカルスタッフらによればムジェッロ・サーキットでは時速360kmに達するだろうとのころ。
モト3の恐怖
125cc時代にも良くあったことだが、モト3クラスでも予選の最中、誰かの『好ライン』に乗れないものかと選手らがうろうろするのだ。常のことだし、今後も変わらないだろうが、しかし、今回のカタール予選ではファウベルが直線コース中盤で好パフォーマンスに達せないと悟った瞬間に減速…その数メートル後ろにサロンが走っていたため、あわやと衝突と思いきや、サロンのとっさの判断でみごとに回避できたのだった。
当然ではあるが、レース・ディレクションでは誰も何も気づきはせず…。
コルティ、照明で不利
『ショーツ(ショートパンツ故に命名)』ことクラウディオ・コルティと言えば冬期テストではメインキャストに名前を連ね、今回も期待の大きかった選手だ。予選では転倒により失速したものの8位とまぁまぁの出来だったが、決勝レースでは実力を出し切れなかった…と言うのも、カタール戦では毎度のことで、眼鏡をかけても人口照明下ではかなりキツいらしいのだ。
MSMA対ドルナの終わりなき戦い
カタールでもMSMA(モーターサイクルスポーツ製造者協会)とドルナ社が、モトGPの将来について話合いの場を持っていた。ほぼ確実になってきているのが、モトGP機の使用は少なくとも2014年までで(冬期間中にカルメロ・エスペレータCEOが明言したよりは延長されている)、そして、予算の削減。
ドルナ社が提案した電子制御ユニットのワンメイク化についてはメーカー陣により却下され、その代わり、エンジン回転数における制限案が検討されているが、ホンダ・ヤマハは歓迎するもののドゥカティが反対しているのだ。解決の道は遠く、議論はまだまだ続く。
だから言ったでしょ
4月6日(木)のプレスカンファレンスでヴァレンティーノ・ロッシが、
「堪忍袋の緒が切れるかって?まだまだ早いですよ。少なくとも6〜7戦の様子を見てからね。」と言っていたが、日曜日の決勝レース後には、
「堪忍袋の緒は、2011年にすっかり切れた。」と。
(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Moto.it 2012年04月11日)
ドヴィツィオーゾ選手には、ぜひ、歴代のマシンの名前も公表していただきたいもんですね。
Moto3機の音に関する件、日本に限らず世界中でカッコ悪いって意見が、ネット上では多いようで個人的には残念です。
ロードにしか興味が無い人ほど、4st単気筒の音が気に食わないんでしょうかね。
ダートトラックとかスーパーモタード、後は近年のモトクロスが好きな人なら、何の違和感も持たないかも?