モトGP『『2012年バルセロナGPこぼれ話』』
ロレンソ、引く手あまた
ケーシー・ストーナー引退宣言が、ホルヘ・ロレンソの評価額を上げたことは火を見るよりも明かで、実際、『ライダー市場』はいまやロレンソ選手の掌中にあり、他の選手らの運命もその決断いかんにかかっているのだ。ロレンソ選手のマネージャーは既にヤマハから2年契約を打診されているが、ただ、ル・マン戦ではHRCともコンタクトを取り始めている(HRCではマルク・マルケスとのチームを強力プッシュ中)。ヤマハ内では既に多くが、ロレンソ選手は “ホンダが積んだ大金に…そして超最先端をいくマシン・テクノロジーに魅せられてしまった” ものと絶望しており、当のロレンソ選手は次のように繰り返すのだ。
「第一候補はヤマハのまま…気持ちの深くにあるメーカーなんですが、ただ、一選手として、とにかく最終決定する前に全ての選択肢を検討してみなければね。決定に至るには3つの要素が決め手になっていて…気持ちの問題、技術(マシン)、そしてお金ですね。」
ロレンソ選手の決断が伝えられるには、おそらく、あと数ヶ月待たねばならないのだろう…そして、本当にHRC移籍ともなれば、その後に続くヴァレンティーノ・ロッシのヤマハ復帰が容易くなるわけで…ヤマハとしてはロレンソ選手についで熱望しているライダーなのだから。ロッシ選手の将来について想像を巡らせるのはやや時期尚早ではあり、また、ホンダ・ヤマハ・ドゥカティがそれぞれ別の思いでロッシ選手のことを考えているのも確かである。また、ロッシ選手本人としても、この不況のおり、契約金額が下がることは覚悟している。
「まぁ、僕の方では、ある程度のマージンがあるってとこでしょうかね…ここ何年間かで、そこそこ稼ぎましたから。」と。
ドヴィツィオーゾ、ワークス希望
アンドレア・ドヴィツィオーゾの目標はただ1つ…2013年、ワークスマシンを手に入れること。本人はヤマハを切望しているが、もしヴァレンティーノ・ロッシがM1機のもとへと戻ることとなったらポストはないだろう…と言うのも、イタリア人2名からなるチームなど考え難いからだ。
で、ドヴィツィオーゾ本人の思惑はこちら。
「チーム『Tech3』の評価は非常に高いし、ボックス内の家庭的な雰囲気なんて素晴らしいですよ。ただ、来年はワークスチームに入りたいんですよ…重要なリザルトを取るにはそれしか道がないですから。ライダー市場で自分が指標になるような選手じゃないってことは100%分かってます。だから、ロレンソ・ロッシ・ペドロサ選手らの動向を待たなければ。WSBですか?すべての門は開けてあるんで…ただ、第一目標はあくまでもモトGPクラスでのタイトルを目指すことですから。」
ペドロサ、HRC希望
ル・マン戦でストーナー引退宣言があった後、HRCの中本修平副社長は“できるだけ早く、2013年に向けダニ・ペドロサ選手と話し合いの場を設ける予定です。”と明かしていた。実際のところ、話し合いの場は設けられはせず…それどころか、ペドロサ選手はもはやホンダにとって第一優先ではないと言う手応え…いや、それ以上の感じがするのだが…モトGPクラスで今でもトップ選手の1人であるにも関わらずだ。ペドロサ選手は次のように語っている。
「僕の意思としては今でもHRC残留です。これまでのキャリア、ずっとホンダで走ってきたし、同じ顔ぶれで仕事をしていきたいと思ってるもんですから。今のところ、他の選択肢は考えてませんが、ただ、市場が別の方向へ行かざるを得ないのなら準備をしておかなければならないのは当然ですけどね。」
ストーナー、要安定
ケーシー・ストーナーが、ル・マンで引退宣言をした際に触れていた話題のいくつか(ドルナに対しかなり厳しい姿勢だった)に立ち返っている。
「1000ccから800ccに変えたのが、非常に大きな間違いだったんですよ。レギュレーション制定を安定させるべきだと思うんです。モトGP機の技術規範を変え続けるなんて、経費を増やさせることであって…遅れてるメーカーが競争力の高いところとのギャップを埋めようとするのの邪魔なんですよ。」
反論し難い。
2013年マシン1台体制へ
モト2・モト3・WSBでは既にそうなってしまったが、来年よりモトGPも1台体制になるかもしれない。経費削減に対し(今のところは)唯一の名案なのだが、ただ、出費を抑えると言うよりは、ただただメカニック&ライダーを悩ませることになるのだ。しかしながら喧々諤々の再考(望ましいのだが)がない限りは、道は敷かれてしまっている…たとえパドック中が反対していてもだ(賛成もわずかにある)。
「マシン1台だけ?良い案とは思えないけど。」と、ヴァレンティーノ・ロッシが当然ながら言う。
そしてMSMA(スポーツモーターサイクル製造会社協会)は、
「ただの提案であって、各決定はアッセンまで先送りになってますから。」と。
[ 後編に続く ]
(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Moto.it 2012年06月05日)
あぁぁ、ペドロサ…バルセロナでは、心底、勝ちたかったことでしょう…