モトGP『ロッシ:ドゥカティから減額オファー』
ヴァレンティーノ・ロッシには休暇が必要なのだ…ラグーナセーカ戦をエスケープゾーンの砂にまみれて終えた今、時間が必要だろう…己の現在を、そして未来を熟考するためには。またもや失意と、アスファルトに叩き付けられた痛み(しかも3日間中2回も)の中でレースを終えたのだから。チェッカーフラッグまで後2周と言うところだった…まぁ、8位以上になることはなかっただろうが。
「コークスクリューでのハードブレーキングで、ブレーキに触れた途端にフロントが切れ込んだんです。まったく予期してなかったことで…プッシュもしてなかったですからね。前の選手とも後ろの選手ともかなり離れてたんで、ただただ完走することだけを考えてました。」
結局、それも叶わず、転倒の理由も分からないと言う。
「スピードは出ていたけど、幸い、どこもなんともなかったです。テレメータのデータも見てみたし、その前の周回でやっていたことと何ら変わりはなかったし…シルバーストーンでの転倒を彷彿させますよね。」
今回のコースでは常より苦労しており、マシンとライダーの息が合った瞬間は皆無だった。
「今週末の間ずっと、うちはフロントタイヤの温度を上げるのに苦労して…レース終盤になっても前輪は新品みたいでしたね…まるで冷えきってるみたい…全然走らせてないみたいにね。」
しかし、ヘイデン選手の方には同じ問題は起こらなかったようで、攻撃的なレースを仕掛けていた。
「優秀ですよね…良いレースをしていた…初めて乗った時から、僕はずっとこのマシンが悩みの種でね…多分、僕自身の特徴のせいなんじゃないかなぁ。例えば、ヘイデン選手に比べて僕の方がウイリーが激しくて…彼はコーナーに強く突っ込んでいけるし…僕らのライディングスタイルがかなり違ってるって言うのもあるけど。彼の方がマシンと息を合わせる時間がもっとあったわけだけど、とにかく僕は苦労してしまうんですよ。」
チーム内での対決も決着がつかない状態で、
「決勝レースでは僕の方が前だったことは多いけど…まぁ、まだ勝負はついてないですね。このマシンだと、チームの経験有る無しにかなり左右されるんで。日本チームあがりのチーフメカニックとライダーじゃ、マシンに馴染みづらくって。ここ何年間かでモトGP自体、状況が変わってきたし、現在のマシンではライダーがあまり違いを見せられないのも確かだけれど、でも、このマシンに関しては本当にいつも苦労してるんです。」
ピリピリと張りつめた話題にも触れてきており、なかなか良く自覚してるわけだが…つまり、自身の将来が目の前の赤いマシンにあるとするならば、みずから言うところの『1つの賭け』に出ることとなるのだと。信頼を置かねばならないだろうし、それほどの賭けに出るならば、巷で噂になっている放棄し得ないオファーなどあるはずもないだろう。
「ドゥカティはオファーを変えてきたんですが…値上げの方じゃなく値下げの方にね。厳しい時代なんだってことも分かってるし、僕も難しい2年間だったわけだし。ラッキーなことに、決めるにあたって金額はそれほど重要じゃないんでね…とにかく、出て行くよりは残る方が稼げるわけだけど。」
ここに至ってドゥカティの何にロッシ選手は惹かれるのだろうか?
「ドゥカティ機を改良し、勝つ魅力は他の何物にも代え難いですね。それに最高峰クラス史上、3メーカーで勝った選手って言うのはまだいないんじゃないですか。極めて危険な賭けですけどね。それにアウディ登場で、かなり色々と変わるように思われるし…状況を改善しようって言うモチベーションはかなりのものだし、残るってことは長い目で見ての賭けに出るってことになるでしょうね。」
自分は戦闘力のあるマシンに乗るべき選手なのだと。
「それに辿り着くには2つの道があって…つまり道を変えて確実性を手に入れるか、そのままの道を進みながら暗闇でひとっ飛びしてみるか。」
特に懸案されることは、
「ここに至るまで何も改善できていないと言うこと…そして、問題点はいつも同じだと言うこと…ストレスですよね。」と。
フェラーリとの比較もしっくりはしないようで、その理由をロッシ選手は次のように説明する。
「開幕当初、フェラーリも厳しい状況にあって、アロンソ選手なんか…できる限りのものをチームにもたらそうと全力を尽くしてましたよね。ただ、その後、彼らは問題点を解消できた…うちはそうじゃない。最大の問題はフロントが充分に地面をサポートしないことです…非常に重要なことで、そこを解決できなたら短期間で戦闘力のあるマシンに変えられるぐらい重要なんです。」
これまで話題にしてきた『賭け』と言うのはこのことであり、1年半かけてできなかったことを成し遂げると言うことなのだ。アウディからのサポートにかけての話だが。
「変えていきたい意思があるように思われるし…ドゥカティに優秀な人材がいることも分かってるんだけど、ただ、アウディのモチベーションがどれほどのものなのか、どう言う風に介入してくる気なのか、今後、レース部門はどうなるのか、アウディにとってモトGPと言うものがどれほどの重要性を持っているのかを見極めなければね。」
確実性が欲しいのならば変えなければならないわけで、選択肢はヤマハのみ。
「別の選択肢もあるんだけど、ワークスじゃないんでね。ホンダのことが良く分からないんだけど…彼らからオファーが来るものと思ってたんだけど、あそこにはリヴィオ・スッポ(編集部注:ホンダHRCのマーケティングディレクター)がいるからね…僕に会いたくないんですよ…で、彼らの門は閉じている…と。」
一方、ロレンソ選手が幾度もロッシ選手と再度チームを組むことは歓迎だと表明しているのだが。
「ホルヘは、この厳しい時期の間、僕に対してとても良い対応をしてくれましたよ…僕に対して最も敬意を示してくれてた選手ですよね。もう、ただただ感謝の一言です。この業界は、期待するだけしておいて、結局、期待外れだとめった斬りにしてくる人間が多くてね。とにかく、ヤマハとの交渉はかなり前に進んでいます。」
あとは決定するばかりだが、しかし、いつ?
「僕は何かを決める時は、いつもある方法で決めてるんですよ…自由な発想ができる場所で考えてみる…ここ何日間かでやってみるつもりです。この後、ヴァカンスに行って、じっくり考えてみるつもりですよ。簡単に決められることじゃないんでね。」
(日本語翻訳:La Chirico / 伊語記事:Gpone 2012年07月30日)
一応、今後のドゥカティ内における技術面に絡めて、フィリッポ・プレツィオージエンジニアの進退について聞かれたロッシ選手は、
「彼は残ると、僕は思ってます。」と答えてましたが。
イタリアンメーカーが日本人のエンジニアを招集する。例えば古沢政生。フェラーリもホンダから後藤さんを引き入れたことがあったように新たな血を入れる事も必要なのかもしれない。特に新しく導入したアルミシャーシのことで発生している問題ならトラリスのノウハウが主なチームなので日本のエンジニアが役に立つかも。
タイトルじゃなくてレースでの勝利という意味でなら、E・ローソンはヤマハとホンダ、さらにカジバでも勝っていますよね。ロッシはマシンの改良でタイトルにも手が届くと思っているのかしら。