MotoGP

ヤマハ電気系エンジニアがモトGPの舞台裏を語る:マッテオ・フラミーニ

『モトGP舞台裏:マッテオ・フラミーニ(チーム・ヤマハ)』

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★バレンティーノ・ロッシとジェレミー・バージェスが厚い信頼を寄せる電気系統エンジニア、チーム・ヤマハのマッテオ・フラミーニ。電気系統の重要性が増す中、その役割は根本的なものとさえなっている。

★マッテオ・フラミーニのプロフィール
1970年6月2日ファエンツァ(ラベンナ県)生まれ。工業専門学校、ボローニャ大学の電気工学部で学ぶ。
自転車、スクーター販売店を営む父親の影響で幼少時より2輪に傾倒。レース初観戦は1976年イモラで、ケニー・ロバーツらが参戦(ランディ・マモラも居たが、若過ぎて参戦していなかった。マイク・シンクレアとは、2000年にヤマハのマックス・ビアッジチームで一緒に働く事となる)。

10代半ばの頃、同郷のジョルジョ・テディオリ選手が選手権で優勝し(同選手権にはファブリツィオ・ピロヴァーノも参戦していた)、地元で2輪レースが盛り上がり、現在の仕事に就く事となる。
1994年、工学部卒業間近でジョルジォ・テディオリによりSBKチーム『ガットローネ』に誘われ、データ収集システムを任される。

翌年、ピエルフランチェスコ・キーリのチーム『ガットローネ』で同様の情報収集システムを使って働き、1997年にヤマハのルカ・カダローラとトロイ・コーサーの居たチーム・パワーホースに移籍。

1998〜99年、チームグレジーニに移籍し、アレックス・バロスのホンダの4気筒、ロリス・カピロッシの250ccを手掛ける。2000〜2002年までマックス・ビアッジのヤマハチームで働き、2003年はマルコ・メランドリと、2004年からはヴァレンティーノ・ロッシと共に働きドゥカティへも共に移籍。



【どんな仕事?】
「マシンの情報収集システムの準備と管理です。つまりセンサーを取り付けたり、メンテナンスをしたり、破損した部品を交換したりケーブルの状態をチェックしたり、異常が起きた時の処置、カーブが曲がり切れないとか、そのような事をソフトウエアレベルで電子制御と全センサーのダイアログ状態を見て管理します。電子制御が受け取った情報を評価し、計算をさせ『トラクションコントロール』の為の緻密なストラテジーに利用します。」

【仕事の分担は?】
「電子制御装置はマニェティ・マレッリ、ただ、主要なソフトウエアは日本製で、あちらで電子制御のストラテジーが管理されてます。これらのパラメトリーに関し、マシンの挙動の違いを把握するため、我々がサーキットで数字を入力します。例えば、第8コーナーより第5コーナーの方を限定的に入力する事で、M1機の大体のトラクションコントロールが得られるとか。同様にアンチウイリーにも有効だし、コントロール関連全てのストラテジーにもね。

【何故、情報収集システムがこれほど重要か?】
「集めたデータをサーキットで見ながら、マシンの挙動を把握出来ますからね。これらのデータからマッピングを変更したり、コーナー出口でのマシンの挙動を評価したり、2カ所のコーナー出口を比較したり、2種類のマッピングを比較したり、更に成果の高いパフォーマンスを割り出す事ができます。つまり、全てのデータを集めて分析すると、方向性が間違っていないかが分かり、良い点、悪い点を把握出来るんです。」

【現在のマシン制御を要約すると?】
「レースでのスタートをコントロールするストラテジーがあって…1つはトラクションコントロールのそれで、もう1つはアンチウイリー用。ストラテジーと言うのはスロットルを開けたまま変更できるようにする事で…1つはトルク管理のそれで、もう1つはエンジンブレーキ用ですね。これらのパラメーターが特に重要ですね。」

【この仕事を始めてから現在まで、どれだけ変化した?】
「凄いです。ここ数年の電子関係は信じられない程の進化ですね。」

【進化しすぎ?】
「見方によりますね。安全面に関しては確実に向上していて、ショー的なレベルでの『ハイサイド』は見なくなりました。電子制御に悪い所はレベルが均一化する事。マシンのパフォーマンスはどれも似たり寄ったりだし、優秀なライダー達がよりペナルティーを食らってる。モト2ライダーがモトGPに昇格して直ぐに最速で走れると言うのが、まさにそれですよね。マルケス選手の事を言ってる訳じゃないですよ…彼は特別だから。ただ、他のライダー達はモトGPマシンで、もっと苦労してたはずだと思うんだけど、実際は、すぐに乗り心地良さそうに走ってますよね。これは電子制御のお陰に依るもので、電制がそれほどでもなかった500ccの2ストロークでは考えられない事でした。」

【話を戻して、仕事は昔に比べどれだけ変化した?】
「94年に僕が仕事を始めた頃は、マシンに10個程度のセンサーが搭載されていたけど、今はデーター収集規模での計算結果から見ると200以上のチャンネルになるんです!つまり、分析する時間も膨大になる訳です。10チャンネルから200に増えたらストラテジーも増え、ストラテジー毎にパラメーターの綿密なコントロールが要求されますから。例えばアンチウイリーを見てみると、包含する全てのパラメータと共に、10年前のアンチウイリー対策よりかなり突っ込んだ分析が必要です。当時は、ありきたりで大雑把でしたね。洗練された訳です…電子制御だけじゃなく、どう処理するかの『判断』に関してもね。仕事は全体的に複雑になりましたね。」


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【ライダーはチーフメカニックと居るより、テレメトリーと一緒に居る方が長いのでは?】
「そうですね。パラメーターとの関わり合いは本当にたくさんあって、電子制御のウエイトは車台の動性に大きく関わりますから。つまり、セッティングやステアリングの角度だけでは無く、それらも電子制御と平行して変更を加えて行くべきなんです。例えば、トラクションコントロールを変更させつつ、最大グリップが得られる新しいタイヤを履いたなら、変化する訳ですよ。」


【責任は重大だけど、満足感も大きい?】
「そうですね。ここ数年バレンティーノ(ロッシ)と働いて、もの凄い満足感が得られましたが、勝利や最終リザルト以外にも、ライダーから“あのコンフィグレーションでレースをしたけど、おかげで良くなったよ。”と言われた時は嬉しいですね。自分はプロジェクトの一員なんだって気持ちが増してね。昔はデーター分析をして自分の見解を言っても、チーフメカニックがデータを管理してたけど、今は僕の責任で自由に…ライダーにも誰にも干渉されずにマッピングして行けるんです。もちろん、動性のレベルで起こる事は考慮しますけどね。とにかく、フレームや車台のチューニングの進化に合わせて電子制御を管理していかなければ。」

【繰返しの効く単純作業ではない?】
「ええ。各サーキットに、それぞれ特徴がありますから。ある面においては繰り返しも効くけど、他とは全く異なるコーナーなんかもある。これは興奮しますよ。特殊な問題を解決し、ライダーを満足させ、パフォーマンスを向上させる気満々になりますから。」


【ロッシとバージェスと言う破格の人物の下で全権を委ねられてる?】
「はい、幸い、2004年の最初のテストの時から直ぐにそうなりました。彼らが来た時には、僕は既にヤマハに居て、マシンの事も、当時のストラテジーも分かってましたから。すぐに信頼関係を築けました。」

【大学の工学部を卒業し、世界選手権のテレメトリー技術者になりたい若者へアドバイスは?】
「まず始めにマシンに目一杯の情熱を傾けなくてはね。これが第一。そして、世界選手権からスタートするかは、それほど重要じゃないです。モト3から始める若手を見かけるけど、すでにレベルは非常に高く、単純なんてもんじゃない。イタリア選手権辺りから始めるのが良いでしょう。話題も分かるだろうし、過度なプレッシャーなしにミスできる可能性もあり、一兵卒から成り上がる事も出来る。僕がそうだったし、役に立ちましたね。仕事を学ぶ以外に、日常生活も管理して行けるようになる必要がありますから。1週間の旅に出て、もしかしたらオーストラリア人、ベルギー人、フランス人、スペイン人と一緒かもしれない…一緒に食べて寝て、合わせていかなければならない訳ですよ。仕事では優秀だけど、人間関係では最悪…なんて可能性もある。ボックス内で浮いてる天才テレメトリー技術者より、平凡でも、集団を成すチームの一員になり得るタイプの方が良いですね。」


(Source:2013年05月14日 Motoit記事より抜粋)

ちなみにフラミーニさんによれば、この仕事のネガティブ面は「家族と一緒にいられない事」と「ライダーが転倒した時」なのだとか。
また、先日、レースが開催されていたル・マン・サーキットについては、こんな風に説明しとりました。
「重要なブレーキングポイントが幾つかあって、エンジンブレーキ管理に優れたセッティングが求められる。出力配分にも最新の注意が必要。マシンを安定させ、できるだけウイリーしない様にし、アンチウイリーで抑えながらライダーが可能な限りアクセルを全開したままに出来るようにする事。緩いコーナーで安定させ、シケインでは反応できるようにする事。単純なサーキットではなく、多くの妥協策を要する」
今回は不調だったロッシ&ロレンソ両選手ですが…
レース後のコメントから察すると、フラミーニさんが担当した辺りは上手くいってたんでしょうねぇ…


話は変わりまして…
ヤマハのライバル側も頑張っとりますな。
モンラウ・レプソルのメカニック学校なるものがあるようでして、こんなCMが作られとりました。



上のCMは実際に学校で学ぶ生徒さんを起用して撮影されたそうでして、そのメイキング映像がこちら。
CMの中の男の子のように、本当に子供の頃からメカニックになりたくて、いつも何かの分解をして遊んでたんだとか。
レプソルのメカニック学校が重視しているのは整理整頓、そして迅速丁寧な作業手順だそうで、将来はやはりレプソルで働きたいと言ってますね。



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POSTED COMMENT

  1. ma より:

    CMで整備してる93番213Vかと思ったら、CBR600RRぽいですね
    こんな外装キット売ってるんですか?600RRがちょっと欲しくなったw

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