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鈴鹿8耐、ストーナー転倒まとめ【前編】

『メルマガちょい見せ…ならぬ、全文公開』

読者の皆様、こんにちは。
先月の鈴鹿8耐レースの名残をまだ引いている今日このごろですが…
あの…ケーシー・ストーナー選手の転倒について…
当ブログのコメント欄への書き込みも、いつもよりも非常に多く、
同件について、いかに多くの方々が関心を寄せられているかを実感しております。

と言うわけで…
7月末に書いた有料メルマガ記事『鈴鹿8耐、ストーナー転倒まとめ』を当ブログで全文ご紹介することにしました。
本来でしたら有料メルマガの記事を無料で全文公開と言うのはあり得ないことなんですが…
了承してくださいましたメルマガ読者の皆様、本当に有り難うございますね。

んでは、ちょっと長いので前/後編の2回に分けて掲載します…どうぞ。


【メルマガ号外 2015年07月30日 発行】
【鈴鹿8耐、ストーナー転倒まとめ】

2015年鈴鹿8耐レースのケーシー・ストーナー選手…
トップ10トライアルでは2分07秒の壁を破る4位(スターティンググリッド3位)の好成績を獲得し、
所属チーム『Musashi RT HARC PRO』も3連覇なるかと期待されていたのですが…
皆さんもご存知の通り、結果はまさかの転倒…(下記映像)
ご本人が言うには…
アクセルを開いた状態でブレーキング地点に差しかかり、
一瞬、スロットルを緩めるものの、マシンは加速し続け…ぞっとするような感覚だったと。



観ている方も本当にびっくりしましたね。
ストーナー選手…ケガは右肩甲骨と左足の脛骨骨折と言う重症ではありますが、
とにかく大事に至らずにホッとしました。
もちろん、ホンダではびっくりしたなんてもんじゃ済まなかったようで…
なんでも午後7時30分…レースが終了した時点で、サーキット内にホンダのマネージャーさん達は1人も残ってなかったんだとか。
次の日、ホンダ内ではけっこう大変なことになってたんでしょうかねぇ…
確かに、ショッキングな展開でしたもんねぇ…
2012年末にモトGPを引退し、987日ぶりに2輪レースに復帰したストーナー選手が、
第1走者の高橋巧選手と交代し、走り始めてから僅か5周…
たったの32km走っただけで転倒し…
それだけでも充分ショッキングだって言うのに…
その後の、転倒に関するホンダからの公式発表に…
ちょっと問題と言うか…行き違いが生じましてねぇ。

まずストーナー元選手が、転倒後に治療を受けた直後、
クリニックの玄関先で、すぐにこんなツイッターを出したんですよ。
《まぁ、僕の鈴鹿8耐は劇的に終わってしまったよ!
スタック・スロットルで、肩甲骨と脛骨を骨折して、何ヶ所かひねってしまった。最悪!》

ストーナー選手がみずから転倒の原因は『スタック・スロットル』だと書いてまして…
え~と…『スタック・スロットル』って言うのは『アクセル制御が開放状態になった』って事なんだそうですが…
このツイートにより…と言うか、むしろ、まさにここからホンダ内部は危機的状態になってしまったと言うんですな。
鈴鹿サーキット内に居たホンダの広報関係者さん達が、ある時点からミーティングに次ぐミーティングへと奔走しまくりだったんだとか。
で、このストーナー選手のツイートから2時間後、
『Musashi RT HARC PRO』チーム…つまり、今回、ストーナー選手が所属していたチームより、
最初の公式発表が出されまして…こちらです。

監督 本田重樹
「ケーシー・ストーナー選手は、昨日のトップ10トライアルをはじめ、この鈴鹿8耐ウィークでチームに挑戦と勇気を与えてくれました。
決勝レースにおいても、トップに導く走りを見せてくれて、攻めた結果としての転倒なので仕方がないです。
チーム3連覇は果たせなかったが、これも鈴鹿8耐だということです。応援してくれた多くの皆様に感謝と、お詫びを申し上げます。
来年、また頑張りたいと思います」

ケーシー・ストーナー選手
「鈴鹿8耐をこのように終えることになってしまい、非常に残念です。
これまで多くの仕事をして、マシンとコースに慣れることを努力し、3人が気持ち良く乗れるセッティングを目指してきました。
全て上手くいっていて、リラックスした状態で快適でした。タイヤと燃料に配慮して、周回数を伸ばせるところまで伸ばそうとしていました。
しかし、ヘアピンに向かってコーナーを抜けている時に恐らく何らかのメカニカルなトラブルが発生。
高速で進入したため、クラッチを切って再度入り込んでいく時間がありませんでした。
バイクを立てて減速しようと思ったのですが、壁に向かって行っていたので、寝かせてバリアに当たることを選択しました。
ただ、残念なことに、このバリアは見た目よりも大変硬いもので、結果として肩と足首を骨折してしまいました。
チームのみんなとマイケル・ファン・デル・マーク選手と高橋 巧選手に感謝したいです。
この数週間、彼らは素晴らしい仕事と惜しみない努力をしてくれました。
彼らのプロフェッショナリズムはすばらしく、彼らとの仕事を本当に楽しみました。
得られたはずの良い結果が出せず、とても申し訳なく思います」

ホンダ公式サイト』から引用

この、上の本田重樹監督のコメントがですね…
ストーナー選手が指摘してるようなトラブルについては一切触れられていなかったため、謎は余計に深まり…
また最初の公式発表がホンダからではなく、『Musashi RT HARC PRO』チームからだったと言うのも謎に拍車をかけ…
その1時間後、ホンダのコミュニケーション責任者の方から出された2回目の通達で、
ストーナー選手の発言にも言及されつつ「機械的な問題があった」と明かされ、
最後の公式発表で、やっと、
『マシンのスロットルが26度で開放状態だった事実がテレメータ・データより確認された』と公表されたわけです。

じゃ、そのホンダの公式発表も見てみますか。
一応、英語のものがオリジナルなようなんで、それがこちら。

『HRC confirm Stoner crash in the Suzuka 8 Hours was due to throttle mechanical issue』

The team had to wait until the end of the race for the bike to be returned so they could exam what caused the accident.
Together with HRC staff, the team checked the machine, and confirmed from the data that the throttle was 26 degrees open before the crash.
It wasn’t clear why this happened and now the bike will be sent to HRC for a full inspection.
HRC will communicate the findings to the media when there is more news.

ホンダ公式サイト』から引用

これは日本語がなかったので…ちょっと訳してみました。

『HRCが鈴鹿8耐でのストーナー転倒事故は機械的トラブルによるものであると確認』

《チームは事故原因を検証すべくマシンを回収するため、レース終了時まで待たねばなりませんでした。
HRCスタッフと共にチームがマシン点検を行い、データより、クラッシュ以前にスロットルが26度で開放状態となっていたことが確認されました。
このようになった理由は不明であり、マシンはHRCへと送られ全面的な調査が行われる予定です。
更なる事実が判明した際は、HRCよりメディアに発表する予定です。》

え~と…ストーナー選手が乗っていたCBR1000RR機って…
てっきり『フライ・バイ・ワイヤ』だと思ってたんですが…
(Wikipedia: http://bit.ly/1IsIsnc )
(※管理人注:『フライ・バイ・ワイヤ』方式は『ドライブ・バイ・ワイヤ』『ライド・バイ・ワイヤ』等の呼び方がありますが、同等なものと認識してます)
実は、鈴鹿8耐でストーナー選手のチームメイトだったマイケル・VD・マーク選手が、
7/31付けのインタビュー記事で、次のようにコメントを出したんです。
『SBKでは『ライド・バイ・ワイヤ』を使ってるんです…ケーブルではなくね。
アクセルの反応も根本的に変わってくるし…どちらもそれぞれ長所と短所があって…
個人的にはどちらが好きと言うのはないですけどね。』
(関連ブログ記事『『ストーナーがずっと謝ってた』マイケル・VD・マーク:2015鈴鹿8耐』)

これって、つまり鈴鹿8耐の方ではケーブルを使っていたって…読めますよねぇ。
つまり、スロットルを閉じたら燃料が流れていかなくなるような…昔式のシステムだったと言うわけで。
これが『フライ・バイ・ワイヤ』だと、物理的な『ケーブル』じゃなく、センサーが電制システムに繋がってまして…
だから、スロットルを閉じても何の意味もないって言う場合もあります。
つまり、電制システムがスロットルバルブをコントロールしてるからでして…

ちなみに余談ですが…
『フライ・バイ・ワイヤ』のセンサーだと、暑さなんかに弱いようでして、
今回、8耐レースのパドックにいた某電気系統エンジニアさんが、次のように説明してました。
「この…うだるような暑さでしょ…マシン内部でも物凄い熱が発生するんで、
確かに、センサーによってはけっこう危ない状態になってしまうこともあるんですよ。
センサーが正確な情報をプロセッサーに伝えることができなくなると、予想外のことが起きるかもしれないんです。
もちろん安全システムはあるんですが、ミスや機能不備への対策用に作られたものですからね。
何かが正常に機能していない際に、ライダーに警告を出す表示ランプもあるんですが、
第一に故障が明確になってないといけないし…第二にライダーが対応している暇がない時もあるんです。」

あの…もっとおもいっきり余談なんですが…
ストーナー選手…まぁ、多分、暑さも大変だったんでしょうが…
他にも、ちょっと大変なことがありまして…
なんでも…遅い選手らに、どうにも我慢ができなかったんだとか。
一応、今回はチームやホンダHRCの幹部の方々なんかが、ストーナー選手に、
「このレースにはちょっと年配のライダーも参加してるし、
なかには1年に1回しかレースには出ないようなライダーもいるんだから」って説明はしてたらしいんですが…
確かに、ストーナー選手…モトGP現役時代も理想的な走行ラインを遅い選手に邪魔されたりすると、
烈火のごとく怒ってましたもんねぇ。
(ブログ関連記事: 『C.ストーナー:ド・プニエをちょいと殴って罰金60万円』)
まぁ、さすがに今回のレースでの転倒と、遅い選手はなんら関係はないんでしょうけどねぇ。

[ 後編に続く ]




Fu Bun 336x216

POSTED COMMENT

  1. より:

    途中までの話ではハルクプロのマシンはワイヤー式の巻きタイプとの話だったのになぜ電スロの熱話に変わるのかイマイチわかりませんが…

    巻き取りタイプのスロットルなんて枯れた技術というか出し尽くされた技術なのにスロットルが固定されるなんて…しかも素人整備じゃなくてワークス待遇?なチームでしょう…

    原因が知りたいと同時に普段バイクに乗る身分としても気を付けないといけないですね

  2. kents より:

    ライダーが馬鹿正直に先に情報をリークしたからメーカー&チームは結局最終的にはオブラートに包んで報告することさえ出来なかった訳ですね。
    死にかけたのは当人なんだしメーカー擁護するよりは怒りとガッカリ感の方が強かったのかな。
    正にSucks!

  3. はな より:

    転倒原因の解析もまだなにもしてない段階で『攻めた結果なので仕方ない』とか
    ライダーのミスのようなコメントを公表するなんて
    チームの監督としてまったく責任感が感じられず信頼に値しない最低最悪の行動だと思います。

    結果として混乱も招いてますし、チームがミスを隠蔽しようとしたのではないかという疑惑が生まれるのも自然なことだと思います。

    さらにマシントラブルということが明らかになってからはホンダからのコメントばかりで
    ライダーを殺そうとしたハルクプロから謝罪も反省もありません。

    本田重樹氏の自己保身のみ優先の行動に反吐がでる思いです。

    • suezo より:

      HRCが供給しているパーツが悪いといってるのだから、
      ハルクプロが謝罪しなければならない理由が全くわからないのですが?

      HRCのカタログにl記載されている
      http://www.honda.co.jp/HRC/technical/partslist/cbr1000rr/2010_CBR1000RR.pdf
      3-13,14ページに乗ってるパーツのそのまま使ってたんじゃないでしょうか?

      • はな より:

        わかりませんか?

        原因をなにも調査しないうちに『転倒は攻めた結果だから…』とライダーのミスと決め付ける発言をオフィシャルな形で発表し、
        ライダーの名誉を傷つけた不用意な行動に対する謝罪ですよ。

        レーシングマシンに携わるプロとしての責任感があるなら
        『転倒は残念だが原因については調査中』程度でとどめておくべきでした。

        さらにパーツの欠陥としてもこのトラブルがハルクプロのマシンにのみ発生していることに
        『関係ない』という態度を貫いていることも無責任だと思います。

        最初の責任逃れ発言だけ異常に早いのにあとはダンマリというのはあまりに不誠実です。

  4. はな より:

    もしかしてハルクプロは自分たちが扱ったマシンでライダーが死に掛けたことより、
    八耐に勝てなかったことのほうが大きな問題だと思ってるのだろうか?

    もしそうならオートバイという乗り物に触る権利すらないですね。

    • ミン より:

      勝手な妄想で相手の事を考えない誹謗中傷も匿名でコメントする権利をもうちょっと考えた方が良いのでは?

  5. LW8610 より:

    メルマガの読者としても、いつも楽しく読ませて頂いております。
    私の印象では、今回の内容の余談はホントに余談ですね….(苦笑)と思いました。

    彼のツイートでも、あんな死にそうな目にあっても誰かを批判する訳でもなく、また遅いライダーの話もドプニエの話も(速度差が)かなり危険だったとの意味と思われます。
    丁度この転倒直前での実況放送にてケーシーの8耐の取り組みを紹介してました。 走る前には必ずエアロバイクで身体を温め且つ心拍数を上げ準備していた事を伝えてました。
    ケーシーの表現にも問題は有るかと思いますが、報道側の表現に意図的な物がもしあったとしたら、それは我々にとっても残念です。少なくともツイッターのような彼の直接の表現の中では、騒がれてるような表現は無いように思えるのですが….
    我々は本当のケーシーを知っているのでしょうか。

  6. mac より:

    管理人さん、おつかれさまです。
    我ながら生意気な指摘だとは思いますが、少々気になったのでコメントします。

    「管理人注:『フライ・バイ・ワイヤ』方式は『ドライブ・バイ・ワイヤ』『ライド・バイ・ワイヤ』等の呼び方がありますが、同等なものと認識してます」という注意書きについて問題があると思います。

    fly-by-wireは航空技術用語です。辞書やウィキペディアでは明確に使い分けています。機構的に同等だからといって呼称まで同じにすることは問題があるのではないでしょうか?

    フライ‐バイ‐ワイヤ【fly-by-wire】 (『デジタル大辞泉』)
    http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/264376/m0u/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%A4/

    Fly-by-wire
    https://en.wikipedia.org/wiki/Fly-by-wire#Further_developments
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%A4

    Drive by wire
    https://en.wikipedia.org/wiki/Drive_by_wire
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%A4

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